Anheuser-Busch社のTad Fry氏の提唱により、昨年から始まったオーナ会議では、設備オーナの 23
社が集まり、各社の経験と要望事項の意見を交換し合った。会議はまずは別室にて直接の関係者だ
けの少人数で行なわれ、要点を集約してからオープンな全体会議でパネル形式で紹介された。 この
技術の経営的意義、活用形態、制約条件、オーナ自身、エンジ会社、サービスプロバイダそれぞれの
立場で、この技術の利用価値をさらに高めるために何ができるか、何をやらねばならないか、など真剣
な議論が行なわれた。
今年のオーナ会議では、予め 30 社のオーナに、昨年から比べて今年の状況の調査を実施した。ま
た1年以内、および3年以内に、ハード、ソフト、サービスプロバイダからどんなサービスや技術の提供
が待たれるか、調査した。
標準化の必要性
ファシリテータ(*1)であるTad Fry氏から冒頭に、上記予備調査の結果、標準化のニーズが非常に
高まってきていることを報告した。
・ スキャニング解像度に関わる標準手順
・ 複数の計測機器による統合化のための標準
・ 点群データの中間フォーマット、データ互換性、汎用的な記録方法
・ 用語の標準化
・ 業界ごとのベストプラクティス(ワークフロー)
・
Fry氏は、こうした標準化に関わる項目が、ASTM E57 Committee on 3D Imaging Systemsの活動と密
接に関わっていることを説明し、この委員会の活動に積極的に参加するよう呼びかけた。
それでは、現時点で何が一番望まれるであろうか。 ここから今年のパネル討議が始まった。
Deborah Deats氏(BP Texas City Design and Document Team Leader)は、 データ互換性
Interoperability を一番にあげた。次いで設備資産のデータマネジメント機能、新しくスキャンデー
タを取り込んだときのデータベース登録の時に一式やり直さなくてよい機能、計測ターゲット設定の自
動化、点群データのボリューム削減手法、をあげた。
Dan Hodges氏(Intel Corporation Program Manager, Technology Integration Office)は、やはり点
群データを精度を落とさないでボリューム削減する手法を指摘した。
Joseph Chumbley氏( Lockheed Martin Space Systems, Senior Technology Lead, Internal R&D,
Terrestrial LIDAR )は、設備管理者としての長期的なデータマネジメント機能を指摘した。 データの
保存管理、検索は 5 年間は必要である。それと点群データに ある領域の壁 のようなインテリジェント
属性が必要。 さらに、点群データから幾何形状をもっとやり易く抽出できる機能、をあげた。
Kevin Akin氏(Caltrans , Senior Transportation Surveyor)は、移動計測で設計グレードの情報が採
取できることを、トップにあげた。 道路を安全に走行しながら絶対座標に対して、x,y 方向に 0.03
ft( 1cm), Z方向に 0.02ft( 6mm) の精度が欲しい。 これが達成できれば国家交通局の求めるニー座
に応えることができる。
Michael Trentacoste氏(Federal Highway Administration, Director of Safety R&D )は、道路の移動
計測で採取したデータを、既存の道路情報システムのデータ、以前に固定もしくは移動で計測したデ
ータなどと統合化できる機能が、最も望まれる、と述べた。
Cody Leishman氏(Petro-Canada Oil Sands, Piping Designer/Laser Scanning Application Specialist)
は、ソフトウェア開発者に対して、データ互換性をもっと改善してもらいたい、との意見が多いこと、干
渉チェックの操作性の改善、エンジニアリングデータとの親和性の改善、などの要望をだした。 それ
とスキャナハードウェアベンダーに対しては、寒冷地での計測器の使用への対応の要求を付け加え
た。
Tom Trieckel氏(Arizona Public Service, Senior Project Manager - Nuclear Projects, Palo Verde
Nuclear Generating Station )は、この機関で発行しているソフトウェアの品質保証要求仕様を満たし
てくれれば、大いにメリットがある、と述べた。
ビジネス上の効用
2007
3D スキャナ活用の効果とし 2008
て、プロジェクトのコスト削減が
33%と今回も最も大きな効用と
してあげられている。 2 番目
は今年度新たに登場した設備
資産管理機能への評価である。
その他、プロジェクトの安全、
建設業務の削減、工期短縮な
どである。
レーザスキャンが資産管理のツー
ルとして定着してきたことが、今年
度の注目すべき動向である。 昨
年度は 30%であったのが、今年は
回答者の半数近く(48%)がこの目
的に利用している。 ライフサイクル
の中では、設計段階での活用が
67% と 最 も 多 く 、 次 に 建 設 段 階 の
52%と多い。 約半数がプロジェクト
計画に利用している。
既存設備の改造、改修が当然多
く 85%であるが、今年は新設プロジ
ェクトにも 15%利用されており、昨
年度の倍の割合で伸びてきてい
る。
この技術の調達先
自社で実施する割合増加。 エン
ジニアリング会社よりも、専門サービ
スプロバイダを使う比率増加。
適用拡大への阻害要因
社内の認知度が低いというのが、
普及のためのまだ一番の阻害要因
としてあげられている。コストが高い
のと、既存の各種システムとの統合
の問題が次に大きな課題である。
今年新たに加わった要因として、社
内にスキルをもった人材が少ない、
ことがあげられており、自社で実施
する割合が増えてきている事と符合
する。