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OJT3

Complex Monay
For Sustainability
もうひとつの「予算制約」
The Sustainable point system

2007年3月25日
2 期生 A6GM1507 服部 徹

1
要旨
私たちは、日々の経済活動以外に、文化や社会、そして自然の蓄積や営みからさまざまな豊か
さを得ている。私たちの現代社会は、主に、経済活動にフォーカスがあたっている。しかし、循
環型社会とは、自然や文化、社会をも含めてすべての光があった社会になるべきであろう。
本論では、古来から私たちが使ってきた、
「お金」に着目する。
「お金」は取引する際には、と
ても便利であるが商品のほかには「価格」という情報だけを取引が成立するために、その他の情
報が、買い手に伝わらないという欠点がある。幾重にも流通を繰り返すと、最終消費者はどのよ
うな商品なのか、私たちは商品以外のことがほとんどわからない。あまりに強力になった「お金」
の機能は、従前、持続可能な営みが行われきた地域の縁や絆やテンポを破壊してしまい、環境問
題が悪化してしまうことがある。文化や社会、自然の破壊は、結果として、長期トレンドとして、
物価上昇基調を作り出し、
「お金」自らの安定性を破壊するという持続不可能性を生む恐れもある。

筆者の提案は、実数部である経済価値に加え、文化の豊かさ(文化資本)や、社会基盤の価値
(社会資本)
、自然の恩恵(自然資本)の増減分を虚数部で表示できるものとし、お金を「複素数」
に拡張することである。
「虚数」部の計量法のひとつが、環境負荷(LCA の統合数値)ベースで
CO2 排出量で統合した指標が考えられる。本論では、2030 年の理想的なビジョンとして、CSR
視点を配慮した虚数価値である「サステイナブルポイント」のある社会を描いた。そこでは、商
品購入時には周辺情報も付与されており、携帯電話をかざすだけで、その商品の背景の情報を見
ることが出来る。そんな、自分のライフスタイルの背景にある「影の価値の情報」を見ることが
できる。

「お金」や「市場取引」と「環境問題」に関係する現代社会の試みとして、
「環境家計簿」や、
「地域通貨」や「SRI投資」
、「環境税」
、「温暖化ガスの排出権取引」がある。従来になかった
公共財を自律分散型でマネジメントする仕組みが単純ではないため、
「自発性を促す魅力」や「分
配方法の紛糾」や「正確な計測」などの困難に直面している。制約を乗り越えるためには、こう
した取り組みを誰でもわかりやすいひとつの体系に統合することが求められる。

具体的なアプローチの実践案として、本論では、
「ベンチャー事業者」によるアプローチを、ガ
バナンスの機動性の面で選択した。環境問題解決を目指す起業家として、自らガバナンスを利か
せつつ、ソリューションを具現化できるからだ。例えば、以下のように進めることを提案した。
1.2007 年度では、
「LCA」ベースの統合指標を楽しく考えるしくみとして、
「家計簿機能」アプ
リケーションに「環境家計簿」を追加したソフトウェアでエンターテイメントビジネスとして参
入し、その中で、サステイナブルポイントを導入した諸機能をビジュアルで楽しくファッショナ
ブルに訴求する。
2.そのアプリケーションでの儲けと人気を基に、
「SRI 投資」や「地域通貨」や「SRI 投資」や
「環境税」などをソフトウェアバージョンアップの中でアップグレードを図る。

株式市場ではなく、共感の資本市場を作り出すことが「成功」の鍵になるだろう。

2
目次

第0章 現代を構築する利便性の体系................................................................................... 4
0.1. 21世紀は、自然・人類の蓄積の利便性を謳歌している ................................................. 4
0.2. 「サステイナビリティ」と、経済・資本主義経済 ............................................................ 6

第 1 章 「貨幣」の利便性 ................................................................................................. 10
1.1. お金は、便利な発明品..................................................................................................... 10
1.2. お金の利便性の体系 .........................................................................................................11
1.4. 貨幣の利便性の環境に与える影響 .................................................................................. 15
1.5. 貨幣の利便性への制約に対するさまざまな提案............................................................. 16

第 2 章 ビジョンの設定:感動をマネジメントする「お金」........................................................... 18
2.1. 2030 年の拡張された「お金」 ........................................................................................ 18
2.2. サステイナブルポイントのある経済社会........................................................................ 20
2.3. 「心の履歴」がついた................................................................................. 23
「お金」に、

第 3 章 環境と経済の結びつけの挑戦からの学び ................................................................. 25
3.1. 「グローバルネットワーク性」を自ら断った、地域通貨 ∼ 用途設計の重要性 ....... 25
3.2. 「環境家計簿」の挑戦..................................................................................................... 30
3.3. 金融側からの、環境評価の価値の取り込みのアプローチ.............................................. 31
3.4. 政策からのアプローチ「環境税」/排出権取引 ∼ 国家が「新たな負担」を提案する難
しさ ............................................................................................................................................. 33

第4章.サステイナブルポイントの KSF とロードマップ ............................................................ 36


4.1. 最初の一歩は、 」から................................................................ 36
「魅力(ファッション性)
4.2. 現在から 2030 年までの変革ロードマップ........................................................................ 37

3
第0章 現代を構築する利便性の体系
0.1.21世紀は、自然・人類の蓄積の利便性を謳歌している
私たち人類は、宇宙空間に、ひとりほおリ投げられて生れ落ちたわけではない。また、無人島
ですべてを自らが行わなければならないわけでもない。地球から、社会から、さまざまな利便性
を享受して、過去のどの世代よりも自らの人生を創造する恩恵を享受している。それらの恩恵は
あげればきりがないが、筆者は、以下のように、現代の利便性の体系を大きく2つに体系化した。
ひとつは、過去の蓄積(資本サービス)から生まれ来る利便性、もうひとつは、需給に応じた適
材適所の仕組み(市場サービス)からくる利便性の体系である。

A.資本サービスからの利便性
資本サービスは、自然資本、社会資本、文化資本の3種類がある。人は、これらから、さまざ
まな利便性を獲得している。
A.1.自然資本から提供される利便性
自然資本は、われわれ人類が生まれる前から提供されていた。それらは経済に拠らず太陽のエ
ネルギーや物質の循環により天然に運用されている。
―大気に関する利便性
―呼吸ができる利便性
―宇宙線から守ってくれる利便性
―保熱ができる利便性 他
―水に関する利便性
―きれいな水が飲める利便性
―必要量の水が確保できる利便性 他
―土地に関する利便性
―海没しない安定した土地の利便性
―気象、災害の少ない土地の利便性 他
―多用な生態系に関する利便性
―食料提供に関する利便性
―動植物を見ることによるなごみや癒しの利便性 他
A.2.社会資本から提供される利便性
社会資本は、多くは政府や自治体によって体系的に管理されつつ、提供されることが多い。人
類の知恵の積み重ねにより、より高度な資本として蓄積してきた。それらの基本サービスへの投
資や運用管理は税金によって賄われることが多い。
―対自然の安全に関する利便性
―防災に対する利便性
―事故に対する保険の利便性
―医療サービスによる身体の速やかな回復の利便性 他
―危害からの安全の利便性
―誰でも参加できる自治による公共サービスのオープン化による利便性

4
―人権保障(法治)による利便性
―軍事サービスによる生命の安全の利便性
―法廷による速やかな紛争処理の利便性 他
―生活インフラに関する利便性
―安くて安定した上下水道の利便性
―安くて安定したエネルギー供給の利便性
―安くて安定した通信サービスの利便性
―安くて安定した交通サービスの利便性 他
A.3.文化資本から提供される利便性
文化資本は、人類など哺乳類の大脳皮質のもつ豊かな創造力が生み出した知恵の集積である。
数千年で人類は文字に蓄え、情報を交換し、精神的な自由度や科学技術を急速に高めてきた。こ
れらの利便性は、ビジネスとして行われることもあるが無償の営みの中で提供されることも多い。
―コミュニティに関する利便性
―安くて安定した情報基盤からの利便性
―安くて安定した博物館などのアーカイブサービスの利便性
―安くて安定した放送基盤からの利便性
―安くて安定したエンターテイメントからの利便性 他
―精神の自由に関する利便性
―使いやすい言語の利便性
―鎮魂を得られる宗教体系の利便性
―安くて安定した教育基盤からの利便性
―安くて安定した芸術館などのコミュニティサービスの利便性 他
―体系化された科学研究資本に関する利便性
―誰でも学べるサイエンス知の体系の利便性
―誰でも享受できる技術体系の利便性
―誰でも享受できる技術システムの利便性 他
A.4.経済性資本から提供される利便性
経済性資本は、人と人の中で価値の交換可能とされる、現金化される「富」の集積である。
「富」
の集積が行われれば行われるほど、食べることのためへの時間配分が減り、より高度な産業、工
業やサービス業へ自らの「自由時間」を増やすことに成功した。特に、技術体系の蓄積と充実の
結果、生活を豊かに安定させ、高度化させる多様な装置や工場そのものの自動化まで成功してき
た。
―金融資本から提供される利便性
―安くて安定した融資からの利便性
―安くて安定した投資からの利便性
―安くて安定した蓄財・資金運用からの利便性
―安くて安定した保険からの利便性 他
―労働資本から提供される利便性
―安くて安定した研究からの利便性

5
―安くて安定した熟練工からの利便性
―優秀なホワイトカラーからの利便性 他
―技術資本に関する利便性
―マテリアル・エネルギーに関わる技術基盤からの利便性
―マーケティング・経営管理に関わる技術基盤からの利便性
―心理・精神に関わる技術基盤からの利便性
―ファイナンス・定量評価に関わる技術基盤からの利便性
―情報処理・ネットワーク技術に関わる技術基盤からの利便性 他

B.取引サービスから得られる利便性
一方で、このような資本サービスは、まんべんなく存在するわけではなく、局所局所に偏在す
る。たとえば、人一人一人からみたとき、その生活からの需要は、成長、就学、就職、交際、結
婚、育児、子育て、独立、老後、などライフサイクルが存在しており、時期・時期により必要な
ものが異なる。このため、人類は、人どうしの権利の「交換」により、さらに富を適材適所に再
配分することで利便性を最大限享受することができる。交換機能(
「市場機能」
)から得られる利
便性は、大きく以下のように分けることができる。
・生産財市場から得られる利便性
生産財市場を通して、A2 や A4 のような資本から得られる利便性、すなわち生産要素に関わる
利便性の適材適所が成し遂げられる利便性がある。このことにより入手可能な生産要素を安く手
に入れることが可能となる。
・消費財市場から得られる利便性
消費財市場を通して、現在の世界の商品の最適資源配分が成し遂げられる利便性がある。
・金融市場から得られる利便性
金融市場を通して、未来と現在の最適な資源配分が成し遂げる利便性がある。

0.2.「サステイナビリティ」と、経済・資本主義経済
0.2.1. 大成功を収めた、経済・資本主義の隆盛
急速に人類人口が爆発しサステイナビリティのバランスが悪化した、ここ70年を振り返ると、
第二次世界大戦までは大国の武力による、資本の奪い合いの状況にあった。その後、東側の社会
主義は A2 の社会資本の国家管理に基づき、西側の経済資本主義は A4 の経済資本を「市場」を主
眼に置き、富を成長させようと競った。米国主導で、特に、戦略的に「市場」をテコに活用し、
貿易の自由化を図り、全世界を市場ネットワークで結ぶことを、国際機関を通して実現したため、
世界各地の経済資本は市場で結ばれることになり、A4 の経済資本が他のすべての資本に勝る状況
を構築することに成功した。
ふだん、生命の危機を感じない限り、何か新しいものを考えることは面倒くさく、何か新しい
行動するのはいかにも面倒なものなのが通常の人類を含む哺乳類の脳の思考回路であるが、マー
ケターは「権利の交換」を加速する為、広告宣伝など五感を過度に刺激することであたらしい行
動に促すしくみを発明し、また、ビジネスパーソンは、国際ネットワークによる経済資源の効率
化を研ぎ澄ませることにより、取引を加速させ、結果として、A4 の資本を、他の資本の自律成長

6
よりも、優れたパフォーマンスですばやく成長させることを実現してきた、と考えられる。
経済・資本主義(B→A4 のシステム)が、他よりもパフォーマンスが高いことは、具体的には、
21世紀以降の全世界的な「低金利」によって現れている。たとえば、少なくとも長期的には経
済成長率と長期利子率は一致するはずであるが、現在は世界的に見ても長期利子率は、経済成長
率と比べて低い。そして、金利が安いということは、今のお金が「強い」ということであり、未
来が「安い」ということを意味し、B→A4 のシステムの勢力は強まるばかりである。お金を貸し
出さずに、むしろお金を借りてあたらしい事業を行うことを促すからである。時代の最先端に到
達しており伸びしろの少ない先進国では、自国の経済成長率数%程度にすぎないために、お金を、
「借りてでも」より利回りの良い海外に投資して、その活動を支援するという状況が生まれてい
る。このため、地球の多くの地域で投資活動が行われ、BRICS などに代表される地域で経済発展
が続き、年率10%近くの成長を見せている地域では、誰よりもお金と、最先端の豊かな暮らし
を求め続け、ニューコンシューマーが生んでいる。たとえば、日本では、経済市場(A4)に対して、
公共サービス(A2)は負け続け、債務は大きく膨れ上がっており、破産防止の観点より、政策金
利を、上げることが難しくなっていると思われる。成長率が2%なのに、長期金利が1%である
ならば、お金を借りて特に経済発展している地域に投資すると儲けが大きいのは明らかである。
この結果、他国への「投資」が過熱するようになる。

0.2.2. 過度の経済・資本主義が毀損する、サステイナビリティ
一方で、この成功が、歪みも齎している。
「サステイナビリティ」への配慮の欠如はその1つで
ある。
「サステイナビリティ」は、単純に言えば、資本が産み出す期あたりの利便性の総量以上を使
いすぎると、特に自然資本が低減し、その安く安定してサービスが得られがたくなることである。
現代のコンテキストでいえば、個々人の単位では強い刺激性がある B の取引サービスの充実の
結果としての A4 の経済資本から得られる利便性とその増幅に熱中するあまり、A1 の自然資本や
A2 の社会資本、A3 の文化資本を結果としてないがしろにし、いつの間にかそれぞれの資本の疲
弊を招く傾向にあることが問題といえる。たとえば、A1 が地球環境問題をひきおこし、A2 が政
府部門の赤字の拡大や公共サービスの劣化、A3 が心の荒廃や幸せ感の欠如などである。

持続可能な(サステイナブル)社会とは、A1、A2、A3、A4 のそれぞれいずれも人類にとって
重要な利便性を与える資本を大切にし、バランスよく成長させられる社会を意味する。
以上から、2030 年までに、地球社会が持続可能な社会になる為には、A1,A2,A3 の価値を再度
見直し、A4 との間で均衡のとれたバランスが構築できる仕組みづくりが、ポイントとなる。
このためには、現代最も盛隆を誇る B→A4 のシステム中に、A1,A2,A3 を挿入すること、すな
わち、
「持続可能性に配慮して経済行動を行うという価値観」を広く「世界」が実践できることが
要諦となる。

0.2.3. 本OJTの範囲とテーマ:
「お金」
利便性の体系のうち、本レポートで選択する、利便性は、経済・資本主義(B→A4 のシステム)
の根底でありとあらゆる調整機能を担うという利便性を発揮している「お金」の利便性である。

7
経済・資本主義(B→A4 のシステム)の「量」の側面を司る「お金」の利便性を確保しつつ、
他の資本へのバランスの構築の方法について考える。このうち、特に、自然資本 A1 については、
主体者が人ではないため、フィードバックが少なくより対応が遅れると思われる。より深刻さが
あり、対応が求められると考え、本論の対象とする。
」の調整機能に注目し、経済性資本 A4 内部だけではなく、新たに自然資本 A1
「お金(貨幣)
との調整能力を組み込んでサステイナブル社会を促す「お金」の体系に置き換えてゆくロードマ
ップが描くことが本論の狙いとする。

ところで、1本目の OJT では、


「儲かるエコプロダクツ/サービスに向けての経営のあり方」
を論じ、経営者のサステイナビリティへの「本気」のあり方と、
「共感」を巻き起こすそのコミッ
トメントのコミュニケーションが、成功の鍵であると考察した。次に、2 本目 OJT は企業経営者
「消費型社会の持続可能性へ向けての変革を促す主体者として、リユースや Web2.0
に立場をおき、
事業などの新たなサービス業の企業家が存在し、経済資本・市場原理からでも社会システムのリ
ノベーションを促す可能性がある」ことを論じ、
「政府は、このようなサービス社会をはぐくむ、
ルール作りで、消費者をリードすべきだ」と提言した。
しかし、一方で、以上は、あくまでも現代社会の枠組みの中から「有効な変化のきっかけづく
り」を論じたものであるが、
「本質的な解決」へ向けてのソリューションではない。なぜならば、
たとえば、前製品よりも環境にやさしい製品やサービスが一部生まれても、あるいは、前の暮ら
し方よりもサービス・イノベーションによりライフスタイルの行動変容が一部促されても、必要
「量」の変化が促されない限り、問題は解決しないからである。
そこで、3 本目の OJT レポートでは、この必要「量」を扱うことで、前論を補完したい。

0.2.4. 本OJTの筆者の立ち位置:非株式公開のベンチャー事業者
SEMSaT(東北大学 高度環境政策・技術マネジメント人材養成ユニット)では、考察を提言
にとどめず、ある立場からの実践的な行動・プログラムが求められる。このため、論考のみなら
ず、サステイナブル社会を支える新しい「お金」のイノベーションガバナンスは誰が取るべきか?
どこから入り、どこのお金で育て、どのように広げてゆくのか?を考える必要がある。

組織フォーマットのオプションとして、次のような方法が考えられる。
0. お役所から入り、お役所のお金で育て、政策で広げてゆく。
1. 企業から入り、企業のお金で育て、企業で広げてゆく。
2. 市民(NPO)から入り、市民のお金で育て、市民で広げてゆく。
3. 大学の研究機関でインキュベーションして、社会に広めてゆく。

筆者のアプローチは、インプリメントを行うプレイヤーの立場として「非株式公開の(ソーシ
ャル)ベンチャー事業者の立場」を選択する。このベンチャーをそだて、企業社会の中で広げて
ゆく方法を考える。長期のガバナンスを集中したコントロールで、行うことができるからである。
すなわち、企画の自由度が最大になり、ファンとお金の流れを自ら設計でき、アイディアをふん
だんに投入できる。

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他のオプションと比較すると次の長所が考えられる。

・政府セクターと比べて、ボーダーレスで専門的な戦略を打ち出しやすい。
・政府は、国土という枠組みを持つ。
(クロスボーダー活動が難しい)
・ 政府と比べて、自主財源であるため、広範なアカウンタビリティ要請が少ない
・ 政府の強制力は、反発やロビー活動にあい、失敗したり骨抜きになりがち
・研究機関と比べて「実践(行動)
」に重きがあり、効果的な成果につなげやすい。
・ 大学など研究機関は、学会、知的生産という枠組みを持つ。
(行動の結果責任を負えない。

・ 大学など研究機関と比べて、少ない活動制約。
(営利活動や政治活動などの規制が少な
い)
・ 株式公開された企業と比べて、ミッションと継続性に基づく超長期戦略が描ける。
・ 株式公開された企業の研究開発活動は、
「事業」のブレの許容度が小さい。
・ 株式公開された企業は、株主や他経営メンバー、上司などの合意形成の時間が膨大にな
りがち。株式公開された企業と比べてガバナンスに主観を入れうる為に、より多くの能
力を巻き込むことが可能。つまり、超長期戦略性を持たせることもでき、また、特定の
ベクトルの投資家に限定ができ、資本の増加以外の価値観を活動に追加することが可能
になる。
事例:
「パタゴニア社(米国)
」(OJT1で紹介)
、グラミン銀行(バングラディッシュ)
・NPO と比べて、
「資本によるレバレッジ」や「戦略的な実施」が効く
NPO は社会のイノベーションを促す提言および行動を実施できる「社会の実証研究のネットワ
ーク」を担う組織と考えられる。すなわち、自らのミッションに基づき、ビジョンに基づき、
しつこく実験を行い、行動を通して国境を超えたネットワークを広げる中で、現在の経済社会
システムの外部からオープンイノベーションを起こし、社会を変革することが可能である。
しかし、
・ ネットワーク作りに限界、人の欲望の中で私物化しやすい。NPO は「人脈による活動の拡張」
と「理事やメンバーによる合意」が基本にある。
・ 大きな変革活動を行うためには、資金が必要であるが、原資確保において、2007 年 3 月
現在最も使いやすい資金源は、0.2.1で示したとおり、
「投資資金」である。

9
第 1 章 「貨幣」の利便性
1.1. お金は、便利な発明品
お金は、
「火」と「文字」と同様に人類が産み出した重要な発明品のひとつである。
昨今、誰もが欲しがり、集めようとする世界で最も人気のあるアイテムのひとつである。
その理由は、世界で最も便利な道具のひとつであるからだ。背景の事情がわからなくても、
「お金」
さえ払えば、交換は世界中どこからでも成立する。
お金は、毎日、現代のライフスタイルの利便性の基盤にあり、日常の多くがお金に関したもの
である。お金が便利なのは、通常、自らゼロから創ろうと考えれば途方もなく時間がかかり、実
現できないような複雑で困難であるものでさえ、商品として売りに出されてさえいれば、その価
格に相当する分を支払えば、自分のものとして手に入れられるからである。また、自ら得意な仕
事をなすことにより、比較的容易に手に入れられる。この結果、人は、農作業をせずして、食を
手に入れ、蚕を育てずして、絹を手に入れ、生産設備を持たないにもかかわらず、地球の裏から
採れた鉱物を使い、緻密に加工された工業製品を手に入れられるようになった。
さらに、人は、お金を貯めたり、借りて事業をはじめたり、保険を掛けたり、投資に賭けたり、
さまざまな活用法を見出してきている。
お金は歴史の積み重ねから、より高次な道具となってきている。歴史を追いながらどのような
利便性機能が追加されてきたかを再整理しよう。

古代、貨幣は、持ち運びが容易、流通するのに必要な量がある、またそれ自体に価値があると
いうことで、
「貝」や、
「石」
、「骨」などが、使われていた【価値定量化機能】
【交換機能】
【可搬
機能(所有者証明機能)】
【価値保存機能】
。国の仕組みがしっかりし、
経済が発達するようになると、
共通の価値尺度として貴金属である「金」
「銀」
「銅」へ置き換わった【共通尺度機能】
。そして、
ある商品がおよそ平均的にどれくらいの交換価値であるかの相場感ができあがるようになった
【価値標準化(相場形成)機能】

ただし、当初は粒状あるいは塊状の金銀の重さで計り交換していたため、交換する際の手間だ
った。これを省く為に、
「鋳造貨幣」が、最古のものは紀元前7世紀の、小アジアの国リディアで
発明された。 ローマ帝国では貨幣の鋳造権を独占し、形、品質などを定め標準化を行い、中国で
も紀元前3世紀に秦の始皇帝が、中国全土の貨幣統一を図った【決済容易性機能】

一方で、金属に基づく通貨の場合、金属の埋蔵量によって通貨発行量が制限されることになる。
中世後半、中国では貴金属の絶対量が不足したため、宋の時代には印刷技術により、国家権力が
紙で代替を保証し、紙幣を活用するようになった【流通量調整機能】
。一方、欧米では、商業の発
展につれ大量の貴金属が必要とされると、盗難や磨耗の危険や持ち運びの不便が生じた。そのた
め、金銀を「金庫」に預け、代わりにいつでも金銀に交換可能な証書を使用して取引をするよう
になった【リスク分散機能】
。また、預けられた金銀の引き出しが少ないことから「金庫」の持ち
主は、預けられた金銀を担保にして、証書を発行するようになった【信用創造機能】
【投資機能】
【利殖機能】
。19 世紀以降になると、様々な商人の証書発行を「銀行」が統一し、紙幣発行権限
をもつ中央銀行として統合された「紙幣」を発行した【共通尺度機能(の強化)
】。「紙幣」は、第
二次世界大戦後ブレトン・ウッズ体制下まで、ドルは金と兌換し、その他の通貨はドルと固定相

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場制をとることで価値を担保していた。ニクソンショック後は、
「ドルと金の兌換が停止」され、
「変動相場制」へ移行し、主要な通貨は、通貨圏の「実体経済の経済力」を背景に価値をもつこ
ととなった【価値標準化(相場形成)機能(の強化)
】。経済システムと国際金融システムが安定
的に発展しはじめると、世界中の価値を評価し、価値のアンバランスなところに裁定取引が行わ
れ、モノの価値を標準化することが行われ始め、世界のサプライチェーンが統合されはじめた【グ
ローバルネットワーク機能】
。その結果、
「プロジェクト活動」の評価も標準化されやすくなり、
経済主体に経済価値担保がなくとも、将来のキャッシュフローに基づき事業計画を評価したり、
さらには未来の可能性やリスクまたは可能性の分岐の一部を取引したりするなど、より緻密な未
来設計を行えるようになってきた【未来計画機能】

1.2. お金の利便性の体系
お金の機能は一般的には、
「価値尺度機能」 「価値保存機能」の 3 機能があるとされ
「交換機能」
るが、本論は、お金の利便性を再考する目的であるため、歴史で追加されてきた代表的な機能を
元に、以下の 13 機能として議論したい。
1.価値定量化機能
2.可搬機能(所有者証明機能)
3.交換機能
4.価値保存機能
5.共通尺度機能
6.価値標準化(相場形成)機能
7.決済容易性機能
8.信用創造機能
9.利殖機能
10.流通量調整機能
11.リスク分散機能
12.グローバルネットワーク機能
13.未来計画機能

【価値定量化機能】人と人が取引する際、価値を数値化することができる
これによって異なるモノの価値を、比較ないし計算(加減乗除)することができる。例えば、本
20 冊と牛 1 頭といった比較を可能とし、
「価格」を計算できる。
この機能を実現するために、取引の際、売り手は、
「どれくらい欲しいのか?」を、買い手は、
「どれくらいの価値を相手に提案しているはずか?」をこの単位にあわせて考え、価値尺度で表
現することになる。あらゆるものの価値は、ひとりひとりの価値観のコンテキストに依存するた
め、個々人から切り離した「価値」は評価不能である。しかし、
「取引」においては、買い手は自
分における、
「価値」を提示することで、
「欲しがり度」を「お金」の尺度で示すことができる。
実現には、コンセンサスの設計が欠かせない。

【交換機能】 等価交換ができる

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物々交換では、相手が自分の欲しいモノを持っていることと同時に、自分が相手の欲しいモノ
を持っていることが必要となり、取引が成立する条件が厳しいが、
「お金」が仲介することにより、
「モノ」をいったん「お金」と交換することによって、取引を成立させることができる。
一般的には、取引には常に相手をだますインセンティブがあり、双方にニセモノをつかまされ
る恐れがあり、交換するときにはリスク分だけ価値を多めに見積もりがちとなり、取引が阻害さ
れがちである。このため、
「お金」は、偽造を強く防ぎ品質を一定に管理したり、法律で交換の媒
介として所定の通貨を用いることを拒否することは出来ないと定め、強制的に通貨に「価値の尺
度」としての通用力をもたせている。また、モノを提供する側が不誠実であることを防ぐ為に、
交換の際に第 3 者が保証したり、あるいはモノの提供側がブランドを保有させるなど、交換を促
す「信用」
「安心」を足し加えることも必要になる。

【可搬機能(所有者証明機能)】価値を持ちあるける
お金とモノを交換する際に、相手のお金が自分の手元に「移動する」ことが正しく行われる必
要がある。このためには、お金を物理的に気軽に持ち運ぶことができたり、あるいは、確実にお
金の所有者が自分に移ることが保証される機能が必要になる。

【価値保存機能】蓄積していても価値が減らない
一般的には、エントロピーの法則により、諸物は劣化し、価値は減ずる傾向にあるが、時間を
越えて「貨幣の価値」を長期的に保存することができる。
これを実現させるために、物理的な磨耗の恐れを防ぎ信用度の高い貨幣の流通システムを構築す
るとともに、価値が安定させられるよう、物価および通貨量をコントロールし続けている。
この機能があるとき、貨幣を使って、
貯蓄: 貯める
利殖: 殖やす
保障: 万一に備える
という機能を提供することができるようになる。

【共通尺度機能】誰もが等しく価値を感じる
関係者間から遠く離れた人も等しく価値を見出してもらえる、共通尺度としての機能。
一部地域あるいは一部関係者だけのみで流通するのではなく、領域を超えて、広く価値が保証さ
れる機能。古くは、
「金」や「銀」など、利便性の高い貴金属が、こうした地位についた。

【価値標準化(相場形成)機能】モノの交換価値が推測できる
「絶対価値」を算出するためには、全地球における当該要素の占める本質的な重要性に基づく
科学的な分析が欠かせない。しかし、人の価値観も商品の種類も、無限とおりの取引価格の組み
合わせが存在するはずである。
しかし、供給したい人が多数存在し、欲しい人が多数存在すれば、
「欲しがり度」が高い人から
順に売り渡さず、一旦、市場という情報処理システムで売り手と買い手の付け値を調整すること
を通して、取引対象の価値を標準化し、
「相場価格」を決めることができるようになる。

12
たとえば、中古品の値決めは難しいが、オークションサイトに行くと、裁定取引などの結果、
およその相場としての値段が結果として生まれている。

【決済容易性機能】すぐ取引が成立できる
交換する際に、複雑な手続きが必要だったり、時間がかかったりの手間がかからない。金や銀
を秤で測ったり、混ぜモノがないかをいちいち確認したり、その所有者本人がなりすましではな
いかと疑ったりしていると、取引の成立が妨げられる。こうした心配時を解決する容易な手法が
機能として求められ、たとえば、公で認められた偽造が難しい流通貨幣を実際に手渡すとか、与
信され本人確認の代わりになるクレジットカードで決済するなどによる方法により実現している。

【信用創造機能】価値のスケジュールを組む
「お金」は、決済するタイミングにさえ、
「現物」が手元にあり、決済が出来ればよい。
そのタイミングまで、
「現物」をずっと保管しているのではなく、一時的にお金が大量に必要な人
に貸し出すことで、
「お金」の全体の流通量を増やすことができる。このことを繰り返すことで、
お金の量は、実態よりも相当量増やすことができる。相手を「信用」できる限度まで、お金を主
体的に「増やす」ことができるということから、
「信用創造」と呼ばれる。これは、信用さえあれ
ば、一定の担保がなくとも、お金が借りられることになり、借金が容易になる。

【利殖機能】お金がお金を生む
「お金」を貸し出す際に、手数料と貸し倒れするリスクを掛けるばかりか、貸し出した人の利
益分を上乗せした利息をとることで、結果として、お金を使って、儲けることができるようにな
る。銀行は、主にこの事業を生業とし、銀行にお金を預けることで、預金に利子がつき、お金を
殖やすことが可能になっている。

【流通量調整機能】お金を保守する
通貨運用当局が必要とする機能。信用創造機能により、お金がお金の流通量を増やしているた
めに、実態としてどれくらいの流動性がお金にあるのかを調節することが求められる。主体的に、
通貨量を調整しないと、通貨の需要と供給のバランスが崩れ、インフレーションやデフレーショ
ンが起こり、貨幣の価値が時間とともに強くなりすぎたり、弱くなりすぎたりして、
「通貨」の「価
値保存機能」や、それに基づく「利殖機能」などが破壊される。
例えば、インフレーション、すなわち、貨幣の価値が時間とともに弱くなると、貨幣に対する
信用が減じ、物価がどんどんあがることになる。一方で、デフレーション、すなわち、貨幣の価
値が時間とともに強くなると、拝金主義が横行し、人やモノの価値がどんどん下がり、ワーキン
グプアが発生したり、人間味のない世の中になる。

【リスク分散機能】万一に備えられる
ひとりひとりの未来は予測が難しいが、統計的に一定のトラブルが発生すると考えられたり、
確率的に事象が起こるとおよそ把握が出来る場合、お金を活用して、リスクを最小化することが
できる。具体的には、経済源地震で建物が倒壊する、急病で収入が失われるなどの万一のリスク

13
には「保険」に入るとか、ある商品が大きく価値が変動する場合、お金を使って、売値あるいは
買値を予約したり、他の資産を購入するなどが可能となる。

【グローバルネットワーク機能】国境を越えた経済資源を活用できる
貨幣が一定のレートで交換可能であるとき、ある地域でしか流通していない通貨(例えば、円)
を他国で交換して、その国の商品を買うことができる。現在はほとんどの通貨に為替レートが設
定されているため、あるコミュニティの経済の商品は、世界中の誰もが買い付けることが可能で
あることを意味している。これは、自由貿易を善とする中で、国と国との関税を撤廃する中で、
国境を越えて経済圏が統合されつつあることを意味する。
自由に商品を行き来させることができるという長所の反面、闇の側面として、ある経済システ
ムの不均衡やゆがみは、国境(すなわち人の認識や、バイオリージョン)を越えて、見えないと
ころ(たいていは経済システムが脆弱で交渉力が弱いところ)に押し付けられるということでも
ある。環境問題が目に見えないところで急速に悪化する要因にもなっている機能である。たとえ
ば、農業保護政策が他国の農業とバイオリージョンを壊滅させたり、廃棄物が国境を越えて輸出
されたりしている。

【未来計画機能】時間と空間を越えて未来を設計できる
以上のお金の機能が充当されると、お金の流れを設計して、事業や未来像を計画することが可
能になる。どのようにお金を資源に割り当てて、モノとヒトを動かして、より大きな未来を実現
するか構想し、それをリスク低く、効果的に実現することができるようになる。良いプロジェク
トがあれば、その企画書を元に資金を集めて、具現化するという「プロジェクトファイナンス」
が可能となる。

また、以上の体系を支える技術をマトリクスで表記すると以下のようになる。
この図は、どの技術の発展が新しい機能に寄与してきたかを顕すものである。情報処理技術など
発明されてきた、新しい技術により、近年、お金はより能力を高めてきていることがわかる。こ
のことから、一度得た、
「お金」の能力は、科学技術の発達などによるものであるため、容易に縮
退しないであろうことが推測される。

表1.お金の機能と技術の関係
基礎コミュニケーション技術 物理通貨 製造・運用技術 金融政策 市場運営 会計 情報処理 ファイナンス技術
価値の伝達 価値の伝達 価値の算定 貴金属資源 通貨の磨耗 金融業務 ストレージ 通信セ バリュ ポートフォ
貨幣 鋳造 紙幣 印刷 通貨の偽造 物理的な安 流通量調 市場調整 会計管理 計算アル 計算機技 電子通信 リスク評 オプション
手法(共通 手段(伝達 方法 (例: 供給確保技 防止/保守 アプリケー (記憶)技 キュリティ 検索技術 エーション リオ管理
技術 技術 防止技術 全保管技術 整技術 技術 技術 ゴリズム 術 技術 価技術 評価技術
言語) 技術) 計算術) 術 技術 ション技術 術 技術 技術 技術
1.価値定量化機能 ○ ○ ○ ○ ○
2.交換機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○
3.可搬機能(所有者証
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
明機能)
4.価値保存機能 ○ ○ (○) ○ ○ ○ ○ ○
5.共通尺度機能 ○ ○ ○ (○) ○
6.価値標準化(相場形
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
成)機能
7.決済容易性機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
8.流通量調整機能 ○ ○ (○) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
9.信用創造機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
10.利殖機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
11.リスク分散機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
12. グロ ー バ ルネ ット
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
ワーク機能
13.未来計画機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

一方、お金の、利便性は、以下のように相互に関わりあっている。

14
表2.お金の機能同士の相関関係図
機能間関係図
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
価 交 可 価 共 価 決 流 信 利 リ グ 未
値 換 搬 値 通 値 済 通 用 殖 ス ロ 来
定 機 機 保 尺 標 容 量 創 機 ク ー 計
1.価値定量化機能 /
2.交換機能 ○ / ○
3.可搬機能(所有者証
○ /
明機能)
4.価値保存機能 ○ /
5.共通尺度機能 ○ ○ ○ ○ /
6.価値標準化(相場形
○ ○ ○ ○ /
成)機能
7.決済容易性機能 ○ ○ ○ ○ ○ /
8.流通量調整機能 ○ ○ ○ /
9.信用創造機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ /
10.利殖機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ /
11.リスク分散機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ /
12. グロ ー バ ルネ ッ ト
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ /
ワーク機能
13.未来計画機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ /

どの利便性を手放すと、他のどの利便性が影響を蒙るか?の因果関係になっている。例えば、
「4.価値保存機能」が壊れると、信用創造機能やリスク分散機能など、5 番以降のすべての機
能に影響が及ばされることがわかる。すなわち、より番号の若い利便性は、より重要な利便性と
なっていると分析できる。

1.4. 貨幣の利便性の環境に与える影響
お金は便利すぎて、使いすぎれば、使いすぎるほどさまざまな問題を引き起こす可能性がある。
「お金」の持つ性能はまだ不完全であると考えられ、地球環境問題の視点からは、たとえば以
下のように悪化させる。

1.世界で経済を発展させて、環境負担を高める
自由貿易協定で推し進められた市場のグローバル化の結果、世界レベルで散らばっている経済
資源の、グローバル経済への再組成が容易になった。そして、非効率のまま停滞していた経済を
投資活動から活性化し、経済発展を促し、ニューコンシューマー層を増やすことに成功している。
一方で、
「お金」の機能そのものが、自然資本への顧慮が少ない結果、国境を越え、世界の経済を
発展を促す「お金」の力は、地域自然環境への負担をますます高める皮肉な結果になっている。

2.農村地域の人々の意識を持続可能な各地の営みから引き剥がし、持続性が失われる
「お金」が交換できるのは、商品化されているものだけである。そして、売り手の意志に応じ
て商品が売買される。所有の移転に関わらない持続的な営みの環に関わるものは、一般的には商
品化されておらず取引の対象にならない。人々は、商品にあふれ、優秀な仲間が多数存在し、自

15
らの才覚でグローバルネットワークに参画できる新しく刺激的な都会に憧れ、都市に流入してい
る。文字通り、世界の最先端の良品に都市ならば触れることができるからだ。地域で、従来どお
りの持続可能な営みを行う人は世界規模で減っている。この結果、持続可能な地域が高齢化に伴
い世界規模で消失するだろう。例えば、日本でも、都市部への人口の移動の傾向は止まっていな
い。現在、半数が 60 代を越えている農村地域の多くは、2030 年になると維持不能になり、食料
自給率は大幅に下がる可能性があるといわれている。

3.貧困地帯の共有地の悲劇問題が、環境問題を引き起こす
貧困地域では今日の食事が必要なのであって、来年の食事を心配するまでのゆとりがないから
である。衣食住に困っている貧困地域では、自然などのさまざまな制約で高く設定されていたモ
ラル水準は、
「食えればなんでも良い」というモラルまで落としてしまう。モラルが落ちた地域に
おける市場メカニズムの導入は、一般的に「共有地の悲劇」の問題、すなわち環境問題を容易に
引き起こしがちである。現在の「お金」の取引は、個々の取引主体者は、取引における「価格」
以外のことまで考え及ばせる必然性がないからである。つまり、買い手も、売り手も、この 2 者
の欲求に従い契約を成り立たせることが可能であり、その取引に関わらない別の側面、例えば、
生態系や子孫のことを斟酌しないし、する必要がない。取引は徐々に、地域ごとの掟や絆を壊し、
環境問題を深刻にしてゆく。

こうした環境問題悪化は、経済性資本へのフィードバックとして、
「お金」そのものの利便性に
も大きな制約がかかる結果となる可能性がある。水資源の枯渇が一次産品の高騰を招き、環境劣
化に伴う災害の多発によって保険商品の高騰を招き金融市場の安定性をかく乱するなどが考えら
れる。この結果、
「物価上昇」の形で顕在化し、世界的なインフレーション傾向を発生させるおそ
れがある。インフレーションの発生は、
「お金」の実質価値の目減りを意味し、
「価値の保存機能」
を破綻させる。
「価値の保存機能」の破綻は、
「共通尺度機能」
「価値標準化(相場形成)機能」
「決済
容易性機能」
「信用創造機能」
「利殖機能」
「流通量調整機能」
「リスク分散機能」といったその他
機能の低下に連鎖し、
「お金」のシステムをダウンさせる恐れがある。

1.5. 貨幣の利便性への制約に対するさまざまな提案
上記のように、性能が不完全である「お金」は危険なので、利用に制約をかけようという試み
は、過去にも提案されてきた。
古くは、イスラム教やキリスト教は、その教義において、
『この世は神が作った世界であるから、
世界のすべて(人もモノも金銭も)の所有権は神にある』という考え方に基づいて、利子をとる
行為(
「10.利殖機能」
)を禁じてきた。現代では、1970 年代以降、イスラム圏でこの教義に基づ
く、本格的な無利子銀行が多数設立されてきた。これらの銀行は「イスラム銀行」と呼ばれ、オ
イルマネーを背景に規模を拡大している。
また、
「モモ」や「ネバーエンディングストーリー」の原作者として、日本でも人気のあるドイ
ツ人作家ミヒャエル・エンデ氏は、
「貨幣は、実際になされた仕事や物の実態に対応する価値とし
て位置づけるべき」と考え、
「お金」を「パン屋でパンを買う「購入代金としてのお金」と、株式
取引所で扱われる「資本としてのお金」は2つの全く異なった種類のお金である」と指摘した上

16
で、
「4.価値保存機能」のない「死ぬお金」を提案し、この考え方を試す為の地域通貨ブームを引
き起こすきっかけとなった。日本で 2000 年代初頭で広まった地域通貨は、
「12.グローバルネット
ワーク機能」を制約するものであった。日本で挑戦された多くの「地域通貨」では、地域コミュ
ニティを活性化させるビジョンが謳われていた。流通範囲を「地域」に限定して、外部ネットワ
ークを拒否し、善意ある活動を促し、労働時間を「地域通貨」で支払い、その通貨で、地域内の
さまざまな「サービス」を受けられるものとした。
Ad hoc な事例としては、日本では、外国の投資ファンドによる企業の経営権の購入(M&A)
の自由については制約をかけようという世論がある。本来は、株式公開とは経営権の分割販売で
「M&A はいけない」という価値観で M&A を制限
あり、それを前提として値がついているので、
するのは矛盾しているが、経済性資本以外のたとえば文化資本などが金銭でやりとりされるのは
おかしいと感じているから「お金さえあれば何でも買える」という「2.交換機能」に対して、制
限すべきだという感情が生まれると思われる。

以上の例のように、
「お金」の利便性を確保するにあたり、想定される制約条件、問題は、
「お
金」の持つ利便性が不完全であるまま、自由貿易交渉の結果「グローバルネットワーク機能」を
有していることである。地域文化(文化資本)や地域生態系(自然資本)のコンテキストのバウ
ンダリ(領域)を越えて、
「価格情報」だけで所有権取引を成立させてしまうからである。欠落し
た情報を補わないまま取引を行うことは、危険である。そこで、お金の、
「自分から遠い土地の商
品でも、価格だけで交換できる」という「お金」の機能を、商品購入時には経済性資本以外の「情
報」も考慮できる「補完」のしくみが求められる。

17
第 2 章 ビジョンの設定:感動をマネジメントする「お金」
利便性を確保しながら環境負荷の低減に繋がる 2030 年の理想のライフスタイルを描くと、目
指すべき社会を一言で言い表せば、
「感謝ある暮らし」である。2030 年、理想のライフスタイル
では、
「お金」は、この社会を具現化できるように、カストマイズされている。
筆者の「お金」の機能拡張に関する提案は、実数部である経済価値に加え、文化の豊かさ(文
化資本)や、社会基盤の価値(社会資本)
、自然の恩恵(自然資本)の増減分を虚数部で表示でき
るものとし、お金を「複素数」に拡張することである。
「虚数」部の計量法のひとつが、環境負荷
(LCA の統合数値)ベースで CO2 排出量で統合した指標が考えられる。本論では、2030 年の理
想的なビジョンとして、CSR 視点を配慮した虚数価値である「サステイナブルポイント」のある
社会を描いた。

2.1. 2030 年の拡張された「お金」


サステイナブル社会が実現されている 2030 年の理想のライフスタイルでは、
「お金」を使うあ
らゆるシーンでひとりひとりが、自然資本について、すなわち、持続可能社会に対して気をつけ
ている。例えば、ネットショッピングする際、商品の製造時・使用時・輸送時の LCA の負荷の値
を確認をしたり、移動の最適ルートを検索する際、あるいは、あたらしい投資先を探る際、環境
への影響を確認するようになっている。これは、経済取引時に、
「価格」と同時に、環境負荷(あ
るいは貢献)の統合指標である「サステイナブルポイント」も同時に支払うことになるからだ。
サステイナブルポイントは、すべての商品を LCA など自然資本への差分として評価し、予算枠
をポイント化したものである。ひとりひとりは、現金以外に「サステイナブルポイント」の口座
を、所属する県にひとつ持っており、このポイントを稼いだり、支払ったりする活動が、ライフ
スタイルの中に加わっている。2030 年の世界では、
「資本主義社会」に、サステイナブルポイン
トが加わった、自然+資本主義の複合型の社会になっており、それぞれの自然資本や文化資本で
の「摩擦(負荷)
」が評価される機能が組み込まれている。つまり、従来の経済資本を賄ってきた
現在流通している「お金」
(これは「リアルキャッシュ」と呼ばれる)以外に、
「サステイナブル
ポイント」と呼ばれる、第 2 の「お金」が存在し、お金の体系は、
「リアルキャッシュ」と「サス
テイナブルポイント」この2つを合わせて価値と考える「複素数」の体系になっている。

18
ビジョンの設定:持続可能性を促す為の「お金」のReDesign

技術面
お金(price)を「整数(数直線)」から、「複素数(ベクトル空間)」
に拡張する。価値の複素空間での評価の結果、貨幣は、「本質
価値」を評価できるようになる。

SP +
¥=価値交換力
サステイナビリティ サステイナビリティに SP=環境保全効果
に貢献して、 貢献して
お金を支払う お金を貰う

¥− 0 ¥+

サステイナビリティを サステイナビリティを
犠牲にして 犠牲にして
お金を支払う お金を貰う

Sp −

図1.お金の価値空間の拡張
2030 年の「経済学」の教科書には「価値」について以下のように説明されている。

「社会の富はさまざまな種類の資本(ストック)で構成されている。経済は、各種資本から生ま
れた差分の動きで構成されたものである。それぞれの資本からの 1 年分の差分の総和を、付加価
値と呼び、数学的には、微分方程式で表される。
⊿資本総和(自然資本、社会資本、文化資本、経済性資本・・・)=付加価値
通常、この付加価値は複素数(α+βi)の形式で構成表記される。
なぜならば、人にとって今すぐ価値を感じる経済性のある価値と、人にとって中長期的に影響
を与える見えざる価値の2つに分けられるからだ。
すべての「存在」には、固有の「価値のライフサイクル(周波数)
」があるからである。
人は、生まれ、学び、キャリアを通して価値を発揮する。30 代∼50 代に最も価値を発揮する。
そして、子供を産み、次のサイクルが巡る。農作物は、毎年、種が芽吹き、そして実る、1 年の
サイクルだ。発展途上の途中の段階でも価値を持つが、本当に潜在的な価値も持っている。また、
役割を終えたときには現在の価値は低いが、歴史的な価値は高まっている。このように、別の長
さの視点を持つことで、ものの評価は変わるものである。本質的な価値をどこまで顕在化できる
か否かは、モノの見る力によって変わってくるし、取引当事者同士の「コンテキスト」によって
相対的に決められるべきものである。しかし、本質的な価値絶対量は変わらない。そこで、価値
の絶対量を、複素数で顕し、実数以外に、虚数部も持たせることになっている。
この付加価値のうち、実数部分は、顕在化されている価値であり、それは「リアルキャッシュ」
で取引されうる。一方で、虚数部分は、顕在化されていない価値であり、
「サステイナブルポイン
ト」で表される価値である。
サステイナブルポイントは、虚数部にあたる値である。ある取引で、サステイナブルポイント
がプラスだと、これからの価値に貢献することを意味し、サステイナブルポイントがマイナスだ
と、これからの価値を奪っていることを意味する。

19
この考え方を導入した、α博士は、以下のように新聞社のインタビューに答えている。
「自然資本を扱うときに直面するのは、経済取引の価格付けとは異なり、価値算定が難しいとい
うことです。サステイナブルポイントは、中期的な生態系全体のウェルフェアの総和をベースと
しています。複雑ネットワークの科学の応用でひとつの自然にはどれだけのネットワーク価値が
あるかを HEP ベースでバリュエーションしてゆきます。
あいまいな部分のある自然資本価値と、
すでに厳密なシステムがある経済貨幣を同じ枠組みで上手く載せるために、複素数を使いました。
サステイナブルポイントは、虚数部です。貨幣が複素数化された結果、自然資本の減衰、リサイ
クルや四季などの経済の回転運動成分を上手にあらわせるようになりました。

2.2. サステイナブルポイントのある経済社会
サステイナブルポイントは、虚数部の金額情報だけではなく、商品購入時には周辺情報も付与
されており、携帯電話をかざすだけで、その商品の背景の情報を見ることが出来る。このポイン
トのおかげで、2030 年では、人々は、自分の暮らしを地球全人類が同じ水準の暮らしをしたとき
に「地球が何個必要か?」をすぐわかるようになっている。地球1個分を基準値とし、これより
も少なければポイントがプラス、地球1個以上の暮らしになるとポイントがマイナスの値をとる。
つまり、自分のライフスタイルの背景にある「影の価値の情報」を見ることができる。人々はこ
のポイントを使ってトレードしたり、貸し借りしたり、持続可能活動によりポイントを稼いだり
することができる。個々の商品あるいは活動のサステイナブルポイントへの換算レートは、知識・
身体・共同体・生態系に関わる要素として、毎年、国際的な NPO の会議体で標準が決定される。
ひとりひとりがこのポイントの残高を気にするのは、環境への配慮の気持ちがあるのはもちろ
んだが、具体的な理由もある。それはすなわち、残高がマイナスになると、マイナスの値の大き
さに応じて、消費金額あたりの「環境税」の税率が上がるしくみになっているからである。一方
で、一定以上のポイントを持っていると、年金、リサイクル料金などの免除や学費免除など、県
営や市町村営の公共サービスや NPO などで恩恵が受けられるようになる。21 世紀初頭はデータ
ベース検索社会であったが、2030 年には、人工知能ナビゲーション社会になっており、人工知能
は人々にさまざまなサステイナブルポイントの稼ぎ方を指南している。飲食する際にも、
「生態系
最適化」された食であるかをきちんと確認する女性も多い。
マイナスに転落しそうな人の為に、オークションサイトでは、このポイントが売られている。
ポイントの移転時には、ポイントの3割が割り引かれるルールが適用されているがよく売買され
ている。買い手の多くは、バリバリのキャリアを都心で歩んでおり自然への接点が少ないビジネ
スパーソンであることが多い。売り手の多くは、サステイナブルポイントの生産者として環境省
に認定された事業者や個人/グループであり、地域に住み込み、生態系の保護区の仕事をしてい
たり、大学でサステイナビリティの研究を行い実践しているリサーチャーだったり、自然融合型
農法を行っている事業者だったり、今までなかなか、経済社会の中で報われなかった人たちであ
る。家族内のポイントの自由な移転は認められているので、子供たちやお年寄りや、主婦あるい
は主夫が家庭における主なサステイナブルポイントの稼ぎ手であることが多い。また、リスクを
とって大規模な植林や自然系を戻す事業を行い、積極的にサステイナブルポイントを稼ぎ、売り
さばく専業事業者も現れてきている。環境負荷をきちんと経済システムに入れるための、環境イ

20
ンパクトのデューデリジェンスを行う専業の「CSR 診断士」の資格はかつての公認会計士同様に
花形資格になっており目指す若者も多い。
NPO で地域の環境保全活動を行っている 40 代のβ女史は、女性キャリア雑誌に以下のように
語っている。
「今、NPO では、地域の銀杏並木や神社の桜の持つ自然資本の価値を、サステイナブルポイント
に算定しなおすバリュエーション(価値算定)のお仕事をしています。また、近くの手賀沼には
鳥がたくさん世界中から来るのですけれども、HEP(Habitat Evaluation Procedure)を使った、
その自然価値の算定プロジェクトにも関わっています。NPO にとっては活動の目標が具体的に与
えられて、そして本当に社会が必要としている誇りを持てる職場になったことがすごく大きかっ
たですよ!HEP で評価した値がそのまま自然資本として算定され、その資本の増減分の算定モデ
ルを作って、市町村や NPO 活動のサステイナブルポイントの値の増減の基礎データになるんで
すよ。うちの NPO の自然保護活動で蓄えたサステイナブルポイントは、一定の利回りで、近く
の工場に貸し出したりしています。エコロジーでのキャリア構築のためには、ぜひ、サステイナ
ブルポイントのバリュエーションを勉強して、CSR診断士を取得されると良いですよ。

地方自治体は、このポイントの域内での総量が裁定でも相殺されることを目指している。サス
テイナブルポイントがマイナスになっていると、交付金がもらえなくなるというルールだからで
ある。このため、東京都や大阪府や愛知県など大きな産業を有している地方自治体は、青森県、
北海道や岩手県などから多くのサステイナブルポイントを買い付けている。また、地方自治体は、
このポイントの総量の昨年比の「伸び」を競っている。政治の政策成果のひとつの重要な指標と
なっている。サステイナブルポイントの伸びが高い組織には、高いサステイナブル格付けが与え
られ、債権などを発行する際に有利だからである。このため、かつての環境系の NPO 事業者は、
今やサステイナブル社会への政策コンサルタントとして高いチャージで雇われることが多くなっ
ている。かつて「大量生産・大量消費・大量廃棄」と呼ばれていたマテリアル冗長社会は、完全
にサービス化社会になった。自動車や家電製品はシェアリングされ、マテリアルベースでのトー
タルオペレーションコストは最適化されている。これには企業が積極的に貢献している。企業は、
CSR 経営の推進により、高い「サステイナブル格付け」を得ようとしているからだ。高いサステ
イナブル格付けを得ると、自社の株式購入に関わるサステイナブルポイントのレートが変わるか
らである。

21
ビジョンの設定:感動をマネジメントする「お金」

もうひとつのお金「サステイナブルポイ MEC パーソナルコンピュータ


ント」は、売買するときのもうひとつの予 新品:
算制約となる。私たちは、地球一個分 価格 15万8000円
負荷 16250SP
の暮らしという制約下に収まるようなくら 循環品: 6点限定
しぶりを受け入れている。 価格 8万4000円∼
商品がリユースされるのが当たり前に 負荷 278SP∼
なっている。=「循環品」と呼ばれる。
サステイナブル
ポイント運用機関
SRI投資
金融機関 地域通貨機能

排出権取引
サステイナブルポイントは、 サステイナブル 免税、各種廃棄
家計簿 ポイント家計簿 手数料軽減
暮らしぶりの、「万歩計」

電子商取引サイト
POSデータ LCAデータ Planet- Memory
(感謝DB、心の履歴)

図2.サステイナブルポイントの他 社会システム間連携

地方自治体の首長であるγ氏は、サステイナブルポイントの国連導入 10 周年記念の席で次のよ
うに講演した。
「サステイナブルポイントのおかげで、自然資本の価値が算出でき、マネジメントできるように
なって、経済資本の比較ができるようになって、長期利回りとの連動性も見られるようになった。
いやいや、実際、政治の議論する中味にも、サステイナブルポイントが効いてきて、政治の議論
が、パワーゲームのために行うのではなく、いかに、サステイナブルポイントを創出できるのか
の内容に関わってきたように思う。議員が議員であるうちにどれだけポイントに貢献したか NPO
によって評価されるようにもなるらしい。こうなると、本当に浸透したと我が身で感じていとこ
ろでございます(会場、笑)
。」
また、サステイナブルポイントの導入の経緯を担当した、大手電気メーカーの経営者のδ氏は
続けてこう語った。
「サステイナブルポイントが導入されたとき、環境経営をすごくやっていた日本の企業は、非常
に有利になった。一方で、中国や当時 BRICS と呼ばれていた企業にとってはすごいダメージで、
一時的に国際問題になったな。でも、良いものは良いというので、インターネットのようにあっ
という間に広がった。情報システムサービスがうまくこの問題を解決した。ただの通貨ではなく、
使い方や活用方法もセットでソリューションした点が良かった。ただのデータとして情報を提供
するのではなく、知識や心や気持ちにつながるような情報をうまくビジュアルで見せることがで
きる仕組みが提供できたのが良かった。それも、人工知能が良く機能したけど、自然資本の全世
界算定は、NPO ベースがボトムアップで積み上げ、精緻化されたもの。サステナブルポイントの
換算エンジンのデータベースこそ、オープンイノベーションだったなぁと思えるのです。オープ
ンイノベーションとは、社会革新の民主化を意味し、そもそもインターネットの百科事典

22
Wikipedia や、システム基盤である LINUX が初期の成功事例としては有名ですよね?・・・」

2.3. 「お金」に、
「心の履歴」がついた
サステイナブルポイントの導入で、地域社会や環境を破壊する取引には、大きなサステイナブ
ルポイントのマイナス値が与えられるようになった。現金的には安くても、サステイナブルポイ
ント的に高くつくことが多くなり、断念せざるをなくなることも少なくない。一方で、地域での
コミュニティ活動には、高いサステイナブルポイントがつけられることになり、現金的な意味合
いは少ない場合でも、このポイントを確保するために多くの活動協力が得られやすくなった。
一方で、サステイナブルポイントの用途は、自然資本の再生産のみに投資されない。むしろ、
文化資本の価値、すなわち、アートやデザインあるいは宗教活動に対する再投資が行われている。
「自然資本」である環境問題の枯渇の問題が進めば進むほど、物質的には制約の多い暮らしを行
わなければならなくなるが、精神性の向上や精神的自由の新しいスタイルを開発することで、そ
のことそのものがさほど重要ではなくなるからだ。欲しいと思わせる対象を変えてゆくアートや
デザインあるいは宗教活動はこれゆえ重宝される。
こうしたビジネス界の価値観の変遷の経緯を見ていた、当時の経済産業省の担当ε氏は、公共
放送の特別番組で以下のように語る。
「このような非経済的な価値に人々の時間を費やすことで、実体経済が毀損するという意見があ
りました。しかし、そうした指摘は、イノベーションは必ず新技術から起こされるというものづ
くりの発想に拘泥してしまったから生まれました。社会の新しい価値の創出は、必ずしもサプラ
イサイドすなわち供給側から起こされるものではありません。受け取る側の変革によっても新し
い価値が生まれることはよくあります。
「環境」は、IT やバイオテクノロジーとは異なり、福祉
やホームセキュリティと同様に「効果」の名称です。このため、本当に必要な環境効果とは何か、
どんなライフスタイルか?を提案できる、価値創造の仕事こそ、研究開発要素なのです。今まで、
日本ではこうしたアートや文化は無償で無限にあると考えてきました。ところが、これが新しい
日本の資源だったのです。たとえば、日本は、金閣寺を代表とする煌びやかな北山文化に対して、
銀閣寺を代表とする侘び寂びの東山文化へシフトした実績があります。

また、2030 年代は、
「感謝記憶社会」と呼ばれている。山林の保全活動や海岸のスカベンジャ
ーなど、サステイナブルポイントが増す行為は、すべて「アースデイ・メモリ」という履歴に記
憶され、どのような貢献を誰がいつ行ったかについて、データベースに永遠に記録されるしくみ
となっているからだ。情報は非公開であるが、毎年のサステイナブルポイント長者ランキング時
にはトップ 100 名の内容が公開される。また、故人となったとき、その貢献の要旨が公開される
しくみになっている。多言語翻訳技術により、文字通り世界中の人の活動が、人工知能と対話し
ながら、日本語(その国の言語)で教えてもらうことができ、厭味を感じさせない。

23
ビジョンの設定:感動をマネジメントする「お金」
環境問題を、 「お金の欠点」を補足する
もうひとつの「予算」で管理する。
「サステイナブルポイント(CSR通貨)」という
あたらしいお金。トラックバックするお金。

お金の向こうに「人」が居る。
第1の流れ
お金

商品
第2の流れ
感謝、名前

気持ち、製品工程、LCA情報、名前

提供者側:キャリア、スキル情報
受取側:感謝情報(心の履歴)、環境家計簿

図3. サステイナブルポイントの感謝をトラックバックする Ad-On 機能

今年、60 歳になった段階世代ジュニアと呼ばれるΩ氏は、社会の変化を以下のように語る。
「一番変わったことは、毎日が素直に「感謝」できる社会になったことです。日本人にとってと
ても気持ちがいい世の中です。日々の暮らしに、たとえばどんな生き物の犠牲の上に成り立って
いるか、どのような人たちの支えでできているかがとてもよくわかるようになりました。昔は、
お金さえ払えばいい、お金だけ求めればいいというスピードゲームだけを楽しむ社会で、それで
いいと思っていましたし、あきらめていましたからね。大学で環境を学んだときは、社会はぜん
ぜん環境に疎かったんですが、サステイナブルポイントが入ってから一気に、世の中の流れが変
わったと思います。このポイントの導入はすごい英断ですよね。結構負担が大きいかと思ったら、
なかなか「ふうん」と思うことがありおもしろいので、素直に使い始められましたね。若い連中
は、もうサステイナブルポイントがあるという前提で暮らしているし。一番大事なことは、豊か
さを「味わう」ことですから。

24
第 3 章 環境と経済の結びつけの挑戦からの学び
理想のライフスタイルを実現するためには、どんな問題の解決が必要となるかについて分析す
る。
ビジョンで提示した、サステイナブルポイントは、取引時に「サステイナビリティ」の視点か
ら利用者がチェックをするという「情報を補う」しくみであり、
「お金」の持つ問題を補完して、
お金の利便性を確保する。しかし、
「お金」に匹敵するほどの発明と巨大な社会システムの実装は、
簡単に実現できることではない。この提案に近い目的で試行されている以下で紹介する先行的な
取り組みは、サステイナブルポイント導入時に想定される制約条件や問題と同じものとだろう。
たとえば、地域の流動性を補おうとする「地域通貨」やコミュニティを促す「コミュニティ通
貨」やエコ活動を促す「エコポイント」などではいずれも共通して「魅力ある出口(用途)
」が欠
けるといわれている。また、家計で環境活動の PDCA サイクルを回すことができるとして導入が
推奨されている「環境家計簿」は、
「つけ続けるインセンティブ」と「記入の利便性」が壁となっ
ている。また、市場の失敗を市場原理で解く「排出権取引」では「トップダウンの割り当て」に
議論百出しがちである。また、
「SRI 投資」では、ファンドである以上、環境性よりも、経済性優
先にならざるをえない限界がある。すなわち、
「自主的にマネジメントさせようとすると、
「魅力
づくり」が必要になり、一方で、強制的にマネジメントしようとすると、
「規制」の押し付け合い
になる」という問題にそれぞれ直面してきた。
以下では、これらの事例と問題点を紹介し、サステイナブルポイントを導入する際に想定され
る制約条件や問題点と、その課題が学べるサステイナブルポイントのKSF(成功の鍵)を明ら
かにする。

3.1. 「グローバルネットワーク性」を自ら断った、地域通貨
∼ 用途設計の重要性
「お金」の問題を真っ向から課題視し、代替するお金を考えようと、ストレートに挑戦してい
る同様の試みとして「地域通貨」がある。

3.1.1. 地域通貨・エコポイントとは?
「地域通貨」は、
「法定通貨」の流動性不足の際、地域内で生産できる物やサービスに関しては
地域独自の交換手段を用いることによって自給自足を高めるために考案された「LETS」
(Local
Exchange Trading System の略)が元祖である。失業問題や地域経済の活性化に効果があるとさ
れる。LETS は、1980 年代にカナダのバンクーバー近郊の寂れた炭鉱の町、Commox Valley で
はじまり、都市からお金が巡ってこなくなり、スキルがあるのにもかかわらず、流動性がないた
めだけに、地域経済が停滞してしまったという切実な用途(必要性)から始まった。町にお金が
巡ってこないのなら、町だけ通用するお金を作ればいい、とマイケル・リントンによって開始さ
れた。お金の「流通量調整機能」の補完である。カナダから、英国や豪州や欧州各国に広がった。
アルゼンチンでは、最大600万人が活用したり、スイスの中小企業向けの協同組合 WIR 銀行で
は、中小企業同士の取引のための清算道具として WIR を、スイスフランと等価のものとして融資
している。
(※ 概要は、Wikipedia「地域通貨」の項目を参照:

25
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E9%80%9A%E8%B2%A8)
日本では、そのほとんどが NPO が提案し、地域から導入してゆくボトムアップの企画である。
「地域通貨」は、徳留佳之氏(http://www.cc-pr.net/list/)の調査によると 2006 年 12 月までに
600 を超える地域で試みられたことがあるという。きっかけは、NHKは、
「エンデの遺言」とい
う特集番組でミヒャエル・エンデの「死ぬお金(マイナスの利子のあるお金)
」という思想を紹介
し、その事例として「地域通貨」を、
「お金の未来への可能性」として放送したことにあった。日
本人は、多様な代替通貨の考え方の中で、LETSのような流動性の危機による代替通貨でも、
「お金」に対する危機意識に基づくエンデによる代替通貨でもなく、むしろ、
「地域コミュニティ
を活性化させる意図的で流通させる通貨」として代替通貨に、注目をした企画が多いようだ。
換金可能な地域通貨あるいはエコポイントを定義することは、
「債務」として計上する必要がある
から避けられることが多い。
筆者も関わったことのあるボトムアップからの地域通貨の事例として、東京都の渋谷地域から
はじまった、アースデイ・マネー(http://www.earthdaymoney.org/)がある。アースデイ・マネ
ーは、渋谷地域でゴミ拾い(スカベンジャー)を行ったり、農作業を手伝うと発行され、渋谷地
域の特定の喫茶店でコーヒーが割引で飲めたり、
「アースデイ・マーケット」という朝市で現金と
して使える。NPO法人 アースデイ・マネーアソシエイションは、スローでオルタネティブな
社会のあり方、働き方を提案しており、この考え方に共鳴する活動同士が連携し、この通貨を受
け入れるネットワークが徐々に広がっている。すなわち、アースデイ・マネーを「受け取る」こ
とでコーヒーを振舞う喫茶店は、自ら環境に良い活動をしない代わりに、いつものコーヒーをア
ースデイ・マネー分だけ「おまけ」するのである。この通貨は、渋谷で始まったこともあり、フ
ァッション性を大切にしており、アースデイ・マネーは、その「お金」を通じて、あたらしい世
界への冒険と出会いがある、コミュニティをつなげる通貨になる、そう思わせる雰囲気づくりに
成功している。こうしたネットワークの広がりは、創設者の嵯峨 生馬氏の信念と、地道な営業活
動の成果でもある。
(※ その他、具体的な地域通貨の具体的な導入や運用の事例については、福
岡県 NPO・ボランティアセンター「やってみようよ!地域通貨∼地域通貨導入の手引き(2004
年 3 月: http://www.nvc.pref.fukuoka.lg.jp/topics_osusume/chikituka_dounyu/dounyu.htm)
に詳しい。
)」
日本では、政府の地域再生本部が中心となって実施する地域再生施策の一環として、
「地域再生
(2004 年 2 月 27 日)が決定され、この施策の中で、
推進のためのプログラム」 「地域通貨モデル
システムの導入支援事業」が選定され、2004(平成 16)年度では、千葉県市川市、福岡県北九州
市、熊本県小国町の 3 地域、2005(平成 17)年度では、千葉県銚子市、島根県の雲南市と海士町、
大分県別府市、熊本県阿蘇市の 5 地域が選定され、電子地域通貨の情報システム一式が無償提供
されている。
このような地域通貨の派生として、地域の環境保全に関わる活動にのみに的を絞ったものが、
「エコポイント」と考えられる(表3)
。エコポイントは、地球環境問題が市民権を獲得するにつ
れて、今後、企画が増えてくると想定される。
この本核的な事例のひとつとして、北九州市では、
「地域通貨モデルシステムの導入支援事業」
の 2004 年度の認定の中で、
「環境パスポート」事業の展開を行っている。
(北九州市の環境パスポート事業について

26
概要 :http://www.soumu.go.jp/c-
gyousei/pdf/t_model_sys_1_s05_01.pdf
図版 :http://www.soumu.go.jp/c-
gyousei/pdf/t_model_sys_1_s05_02.pdf)

この活動を紹介した、地域再生本部の紹介「第7回 市民力が創る「環境首都」北九州−福岡
県北九州市:http://www.wagamachigenki.jp/saisei/02_07.htm 」によると、概要は以下である。
実証実験の参加総数:1,127 人(延べ参加人数総数 3,672 人)
ポイントの発行状況: 110,189P (1p=10 円相当)
地域通貨が入手できるエコ・プログラム数:112 個
※人気エコ・プログラムトップ3(動員数ランキング)

1位: グリーンコンシューマー(1,251 人・2,516P)
2位: 地域清掃活動(881 人・25,815P)
3位: 資源回収(835 人・18,155P)
北九州市では、全市を挙げて平成20年度から本格導入を目指している。

27
表3.日本での「エコポイント」の試行例
主管 名称(単位) 開始年 ポイントの貯め方 使い道 参加者
〔企業によるもの〕
「エコカード」1枚=1円と換算。「エコカー
グリーンプロモー グリーンプロモーションに賛同する顧客が賛同書 ド」ポイントはリコー中部販売グループが
リコー中部(株) 2001年∼ 購買顧客
ション「エコひいき」 「エコカード」を送る。 用意した準備金から費用捻出され、環境
市民グループの支援金として使われる。
ナイスパス エコポ 2004年∼ 公共交通利用による環境保護への貢献をポイン
遠州鉄道(株) イント トする。利用金額の1%=1エコポイント。バス・鉄 1,000ポイントで¥1,000分の商品券進呈。 購買顧客
道乗車用ICカードを利用。
2007年∼ ・エコ商品との交換
・環境フォーラム参加  ・環境家計簿
デンソーエコポイン ・環境イベント招待 デンソー従業員と家
デンソー(株) ・環境ボランティア    ・ごみゼロ運動
ト制度「DECOポン」 ・植樹 族3万3千人
・エコ通勤         ・エコ商品購入
・環境NPO支援
北陸鉄道㈱ ICa ECO point 2007年∼ バス・鉄道乗車用ICカードを利用。バス運賃・バ
ス定期券¥100毎に1ポイント獲得。加盟店で
ポイントはICaに積み増し(チャージ)可
¥2,000以上の買い物で20ポイント獲得。 購買顧客
能。
カーシェアリング(会員制レンタカー)の利用でポイ
ント獲得。

〔国/自治体によるもの〕
2004年∼
北九州市民 環境 ・H16.12∼H17.1まで
・古紙の回収 ・空き缶、ペットボトルの回収 ・自治体の施設や協力店で特典と交換。
北九州市 パスポート「カンパ の期間限定で実験
・廃食用油の回収 ・NPO支援
ス」 ・募集1000名で実施
池田町役場振興開発課 エコいけだ環境ネッ 2004年∼ レジ袋不要・給油時アイドリングストップ・クリーニ
10ポイントで¥50の商品券として利用可
トワーク ング店へハンガー返却・空き缶ペットボトル回収 一般
能。
機の利用等でエコポイント獲得。
2005年∼ ・各家庭で地球温暖化防止をめざす環境県民運 ・個人参加者:協力店舗でポイントに応じ
「みえのエコポイン 動 た特典と交換。 三重県民(個人参加
三重県
ト」 ・各家庭で期間内の電気やガスなどの使用量を ・グループ参加者:支援金をs級(1ポイン /団体参加)
前年より減らすと、その量に応じてポイントが溜 ト=2円)
2005年∼ 100ポイント貯まるごとにエコライフスタン
Webのイベントに参加 一般
環境省 プラリーでスタンプが押され、表示画像
エコポイント ・エコチャレンジ ・エコライフアイディア 21,745ファミリー
「我が家の環境大臣」 が変化。
・エコ度チェック 他 723企業
ポイントラインキングなどあり。
市川市企画部ボランティア・ いちかわエコボカー 2006年∼ 市の指定するボランティア・エコロジー活動に参
NPO協働推進課 ド 加、e-モニターのアンケートに回答、マイバッグ
公共施設の入場などに利用可能。 一般
運動(レジ袋断り)、アルミ缶回収等をすることで
ポイント獲得。
2007年∼ 1日1回のみアクセス可能なwebサイトに、「レジ袋
東京都 港区 環境課地球 「みんなとエコポイ 「みなと環境にやさしい事業者会議」が
不要」「コンセントをこまめに抜く」など、毎日の地 港区民
環境係 エコポイント事業 ントカード」 提供するバザー品などと交換できる。
球環境にやさしい行動を自己チェックしポイントを
国土交通省、松山市、中央 まちづくりエコネット 2007年∼ 情報端末利用・買い物・公共交通利用・自転車
エコポイント獲得上位者に、電子マネー・
商店街 利用・早朝出勤等にてポイント獲得。RFID利用 一般
商品券・海外旅行券等を進呈。
で、端末付近を通過するだけでポイント獲得。

〔NPO/その他〕
東舞鶴商店街連盟 れんがくらぶ 2000年∼ 買い物のポイントの他に、レジ袋持参によりエコ ポイントは、地元の映画館・ガソリンスタ
ポイント獲得。 ンドの他、JRオレンジカード、ハイウェイ 購買顧客
カード(廃止?)に交換可能。
NPO法人アースデイ・マネー 2001年∼ カフェなど飲食店、雑貨店、アースデイ・
earthday money [r] NPOの活動にボランティア参加や寄付 一般
アソシエーション マーケット(朝市)で利用可能。
くりやまコミュニティネット 地域通貨 2003年∼ エコポイント協賛店にて、レジ袋や梱包を断ると
クリンは登録企業・団体へのさまざまな
ワーク 「クリン」 エコポイント獲得。 購買顧客
依頼に利用可能。
5ポイントで500クリン獲得。
品川区商店街連合会 きたしなカード葵 2004年∼ 加盟店ポイントカードを利用。買い物¥100毎に1
500ポイントで、加盟店にて¥500分の割
ポイント、エコスポットにて空き缶・ペットボトル回 購買顧客
引。
収2本毎に1ポイント進呈。
2005年∼ ・1回のエコ活動ごとに、EXPOエコマネー1ポイ
ント発行
NPO法人エコデザイン市民 ・レジ袋を断る ・エコ商品との交換
EXPOエコマネー 一般
社会フォーラム ・環境学習に参加 ・植樹
・公共交通機関の利用
・エコ宣言をする。
NPO法人エコデザイン市民 交通エコポン 2006年∼ 公共交通を利用し、愛・地球博入場券を専用の 貯めたエコポンは、エコ商品との交換や
社会フォーラム リーダーにタッチするだけで、環境行動ポイント” 植樹への寄付に使用されるEXPOエコマ 一般
エコポン”が貯まるシステム。 ネーに自動換算される。

3.1.2. 地域通貨・エコポイントの課題:限定だからこそのサービスは何か?
多くの活動が生活の一部に深くささっている「ドミナント」を形成するまでに到っていない。
その原因として以下の点が考えられる。
1.独自の魅力ある「用途」が足りない
地域通貨やエコポイントは、
「独自の流通ネットワークのデザイン」
、すなわち、この「お金」
を貯めると、どんなサービスが期待できるか?の用途開発が不十分である。
用途を明確に設計した結果、広く受け入れられた好事例としては、
「図書カード」がある。子供
の進学の贈答用や学校での賞品などとして、現在も流通している。

28
地域通貨やエコポイントは、流通業者が提供する商圏に顧客を囲い込む為に日常的に行われて
いる、割引制度である「ポイントカード」や商店の「スタンプ」と同類であるため、もっと戦略
的な構想力が欠かせない。人がポイントカードを持ち歩いてしまうときは、ポイントが溜まると
景品があたったり、ポイントの値が、現金として使えるなどのメリットが付与されているからだ。
また、そもそも財布のキャパシティは限られているから、この狭いスペースを狙って、流通業者
は競合他社の同類のポイントカードと差別化する。例えば「ANA マイレージ」が「Edy」と連
携するなど、ポイントの連携を行い、より優れた魅力ある「用途」のネットワークで競っている。
地域通貨やエコポイントは、目標数値を達成することによる公共サービスとゆるやかに関係づ
けを行われることが多い。これらは用途サービスの絞込みが甘く、地域の「触れ合い」的なサー
ビスに留まりがちで魅力が弱くなりがちである。

2.流動性のコントロールが難しい
善意をベースとする地域通貨やエコポイントであっても、価値の算定が恣意的に行われたり、
また監督およびマネジメントが欠けると、合理性が破綻する。ポイント発行業務は、基本的に債
務発行業務であるために、その裏づけになる担保が必要である。借り方、貸し方のつじつまが合
わないと、価値のインフレーションやデフレーションがおこりやすい、不安定な存在となる。
例えば、SROI(Social Return of Investment)による算定を行い、その価値が保存され
ているという証拠に基づき、各行為を自然資本の場合はLCAによる評価や、文化資本の場合は
例えば時間価値算定での評価するなどを行い、正しく算定し、値決めした上で配布、流通させる
マネジメントが必要である。

加えて、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター「ローカル通貨研究会報告書」
(2003 年 6 月:http://www.glocom.ac.jp/project/lc/LocalCurrencyReport.pdf)は、地域通貨の
今後の課題として、
「政府や公共自治体、商店街など既存の枠組みとの連携」を指摘している。
・国家の通貨発行権に対する地域通貨の除外
・地域通貨の流通における法的制約問題の解決
・対内通貨としての地域通貨の設計
・地域内資金循環を促進するための地域再投資法制の整備
・商工関係団体による地域経済の再生
・公民パートナーシップによる地域再生
・技術的な地域通貨運用上の課題解決

また、エコポイントを付与する際には、LCA との関係付けによる説得力の付与や、結果のビジ
ュアルかが求められる可能性もある。このため、例えば北九州の環境パスポート事業では、北九
州産業学術振興局と NPO 里山の会、早稲田大学 環境総合研究センター吉田徳久教授らは、
「地域
通貨を活用した環境ネットワークの構築に関する包括的研究」として、
「市民との年環境情報のあ
り方や持続可能な都市構築に役立つ意思決定ツールとしてのサステイナビリティ指標の開発
(http://www.waseda.jp/weri/cluster/contents/clus-
chiikitsuka.html)
」を合わせ行ってい
る。

29
3.2. 「環境家計簿」の挑戦
市民レベルで「環境意識」普及させるプラクティカルな試みとして、
「環境家計簿」がある。コ
ミュニティづくりにつながる外向志向の「地域通貨」に対して、
「環境家計簿」は意識の高い家庭
が、自らの環境負荷を計測し、段階的に削減に挑戦する試みであり、内向志向が高い。
「環境家計簿」は、生活の中で環境に関係する出来事や行動を記録し、家庭でどんな環境負荷
が発生しているかを、あたかも家計の収支計算を行う家計簿をつける感覚で把握する家庭の環境
マネジメント活動のひとつである。環境家計簿の種類によるが、多くは、電気代、ガス代、水道
代、ガソリン代などインフラや、灯油、ガソリン、アルミ缶、スチール缶、ペットボトル、ガラ
ス瓶、食品トレイ、生ごみの量などで、CO2排出量や廃棄物を計算するものが多い。これらの
項目ごとに、使用量に対してCO2の排出係数を掛けて、CO2排出量を算出したり、そのほか
の項目と足し合わせて指標化する。指標化されるために可視化に優れている。
たとえば、以下のインターネット上の家計簿は、比較的簡単に記入でき、また改善ポイントも
わかりやすく、使いやすいようにデザインされている。
(事例)

図4.環境家計簿事例:CASAインターネット環境家計簿
URL: http://www.shiftra.jp/casa/system/index.php?&ac=graph1

環境家計簿には、現在、以下のような課題があると考えられる。
1.データ入力が手間
毎月/毎日、繰り返し計算をしたり、情報を探したり、集計したりすることが手間である。さ

30
らに、生活のありとあらゆる購入品を入力しようと管理するのは大きな手間になる。通常の家計
簿への入力もたいへんであるが、さらに同様に、自分のライフスタイルの正しく排出量を完全に
把握しようとするためだけにこの行為は大きな負担になる。さらに、換算表がない商品について
の LCA 情報を入手あるいは推測することが通常の消費者にとって極めて難しい。
2.継続するメリットがわからない
多くの環境家計簿は、つけ続けるコストに見合う「メリット」がわかりづらい。
第1に、生活における電気光熱費と交通の使用量に注目しているが、これらは生活の基盤とな
っているものであり、マネジメントの幅が少なく、管理した結果、改善の打ち手がみつけづらい。
第2に、価格が使用量と正比例にある場合、環境負荷と使用料金が比例するため、そもそも家
計簿で管理が可能であるため環境家計簿の2重管理は無駄である。
このため、ライフスタイルの環境負荷評価として、一度棚卸をして把握したあとは、環境家計
簿を継続する魅力は極度に落ちる。環境家計簿で本来管理すべきものは、同じ価格と機能におい
ても環境インパクトの改善感度が高く、かつ、毎回選択が異なるような商品・サービス(交通ル
ートの選択、産地の異なる食料品、家電製品、文房具、など)で、活用されるべきだろう。この
点では、エコポイントとの連携が望まれるだろう。

3.3. 金融側からの、環境評価の価値の取り込みのアプローチ
∼ 金儲けと環境保全の 2 つの異なる目的を追う難しさ

3.3.1.成長するSRI投資ファンド/エコファンド
「お金」の機能を変えないで、
「環境問題」など公共性の高い問題解決に、
「お金」側から歩み
寄ろうと、金融と環境の懇談会が幾度かなされている。
「お金」の使い方を「使う側がしっかり考
える」ことで、
「お金」の取引の際の情報不足の問題が解決する可能性である。
その選択肢のひとつが「SRI投資(あるいは CSR 投資)/エコランド」である。
SRI 投資ファンドは、従来の財務分析による投資基準に加え、 社会・倫理・環境といった点な
どにおいて社会的責任を果たしているかどうかを投資基準にし、投資行動をとるファンドであり、
認知が広がるにつれて年々投資規模を大きくしている。同様にエコファンドは、そのうち環境性
のうに特化したファンドであり、
「より気持ち良く儲けたい」ニーズに応えるためのソリューショ
ンである。
「SRI投資」を行うために、投資家や、SRI 投資信託の運用に多くの人が参考にするのが「SRI
指数」であり、SRI 指数銘柄に選ばれるということは、高い社会的信頼度と健全な財務内容を併
せ持った企業であるという評価の証となる。
社会的な責任を担おうとする際のジレンマは、2つの目的の「資本を殖やす」と「社会的責任
に投資する」を、1つの手段で提供することにある。環境ビジネスについては、多くは公共財(社
会資本)として政府が管理しており、規制緩和に従い社会市場が開かれるに従い、事業性が高ま
ることになり、投資市場として、十分なだけの規模がまだ確立していない。このため、社会的責
任を負うことは事業として回収できないコスト負担になる可能性もあり、CSR活動に真摯な企
業は、このコストを投資家の利回りで支払うか、顧客への価格上乗せで支払うということになり
かねない。SRI 投資 INDEX は、以下のとおり、財務体質の良さを選んだ上で、社会的責任を果

31
たしていると思われる企業をリストアップしている。代表的な指標は、それぞれ以下のように決
められている。
・ DJSI(Dow Jones Sustainability Index)
米国のダウ・ジョーンズ社とスイスの SRI 調査・格付け会社である SAM(Sustainability
Asset Management)が作成した、SRI 評価に基づく指数である。
「Dow Jones Global Index」に含まれる世界の企業 2,500 社を母数として、財務の健全性を基
礎に、経済、環境、社会の 3 つの観点から SAM が調査し、各業種で上位 10%以内の評価企業
が採用される、とした指数である。
・ FTSE4Good
英国の金融紙フィナンシャル・タイムズとロンドン証券取引所の合弁会社である FTSE イン
ターナショナルによって作成された指数。選定にあたって、
「ネガティブ・スクリーン」を行い
「タバコ、核兵器の主要な部品やサービスを提供する会社、武器製造会社、原発を所有・操業
する企業、ウラニウムの採掘製造企業」を排除した上で、
「ポジティブ・スクリーン」として、
「環境的持続可能性」
「社会問題とステークホルダーの関係」
「人権」について評価する。
・エティベル・サステイナブル・インデックス
ベルギーのエティベル社による、SRI 投資 INDEX。エティベル社は、持続可能な優良株式銘柄
のみを選出した「エティベル投資ユニバース(Ethibel Investment Register)
」を運営管理し、こ
のうち時価総額の高い企業を業種と地域のバランスを考慮して選出する「エティベル・サステナ
ビリティ・インデックス(ESI)
」を作成する。

3.3.2.外部価値を算定するいくつかの手法
SRI 投資の問題は、本当に環境問題解決に関心のある合理的な投資家であれば、お金を殖やす
目的には、パフォーマンスの高い企業を自らの目利きで選び、一方で、殖やしたお金でパフォー
マンスが高く、自らが共感できる環境問題に有効なNPO/NGOに投資した方が、より自らの
望む結果にフィットするという点である。すなわち、SRI の社会性の部分への、経済価値への踏
み込み精度が低いのである。
この課題に対しての手法としては、従来の損益計算書では捉えられない企業の事業活動から生
ずる外部経済に対する効果を数量的に把握する方法として、REDF(The Roverts Enterprise
Development Fund)のSROIや、クラブエコファクチュアの EEBE(External Economic
Benefit Evaluation:登録商標)がある。
SROI は、ある投資物件において、顧客から得られる投資収益と、その活動から社会的に節減
できる従来の方法による費用や社会的な利益を合わせた社会面の収益を加算して ROI(投資利回
り)を計算する。
(※ ガイドラインは、次の URL を参照。 http://www.redf.org/publications-sroi.htm)
また、EEBE は、企業の事業活動から生ずる外部経済に対する効果の数量的な把握の方法の企
業監査の方法として設計されており、企業の事業活動やプロジェクトから生ずる外部経済に対す
る積極的経済効果を把握する。具体的には、社会側面の社会環境価値単価として、環境負荷に関
する、市場経済の領域における単価(排出権取引金額、廃棄物処理コスト、ロンドン金属取引所
価格;LME、エネルギー原価など)を適用して社会側面の負荷単位量に対する社会的損失金額を

32
設定して、その外部経済コストを測ろうというものである。
(※ ガイドラインと事例は、次の URL を参照。 http://www.ecofacture.com/eebeguideline/)
SROI や、EEBE で評価された社会性の価値の算定方法の視点と、当レポートで、サステイナ
ブルポイントと呼ぶ評価は経済性資本以外を、マネジメントや比較評価可能となるよう、経済性
に類似する視点から定量化するという点で基本的に同じである。これらの手法への今後の期待は、
「考え方」の提示にとどまらず、実際に実用性が評価され、環境外部性の評価の標準となったも
のが、もっとも有効な外部評価指標となることである。

3.4. 政策からのアプローチ「環境税」/排出権取引
∼ 国家が「新たな負担」を提案する難しさ

3.4.1.「環境税」の導入の反発
「お金」の機能を変えないで、
「環境問題」など公共性の高い問題解決に、公共財の管理者とし
て政府が解決案を提示することも可能である。しかし、トップダウンでなんらかの「痛み」を伴
う内容を提案することは、大きな抵抗に出会うことがある。以下の「環境税」の事例から想像が
つく。 例:
「「環境税」の導入に反対する」
((社)日本経済団体連合会)
「環境税」は、LCA の高い特定の製品を使用するたびに一律の税金をかけ、消費量を減らす方
向へドライブするとともに、税収を環境に関わる公共投資に使おうと考える、
「市場の失敗分を補
う」しくみである。新古典派経済学的な考え方に基づくと効率的な方法のひとつであるが、
「税率
を正しく設定するコスト(特に、環境負荷のあるすべての財に機動的に税率適用は困難)
」と「徴
税およびモニタリングのコスト」があるため、有効性には議論がある。
加えて、日本国内にあるしくみをトップダウンで導入しようとするときに「あたらしいものに
対する挑戦に対する恐怖心」という制約条件がありそうだ。実際、日本国内では、2004 年度、2005
年度と政府内で導入の是非について検討が行われたが、産業界から、
「ガソリンなどエネルギー源
にかけることで、実質値上げにつながり、国際競争力上不利に働き、産業が空洞化する」という
理由から厳しい意見が出され、結果として導入が見送られている。
「サステイナブルポイント」の導入は、考えられる制約として、国家の枠組みをトップダウン
で行おうとするときは、同様の反発があると十分に考えられる。国内導入に上手に成功させる為
には、ボトムアップというコンセンサス作りを大事にすることともに、海外からの賞賛などの第
3 の視点の支持を加えることが欠かせないだろう。

3.4.2.排出権取引
環境汚染物質の排出量をコントロールのために、
「税金」ではなく、
「環境汚染物質の排出量」
そのものを取引対象にし、
「お金」でやりとりできるようにした手法のひとつが「排出権取引」で
ある。排出量全体を抑制するために、あらかじめ排出主体間で排出する「権利」を割り振り、割
当てを超える排出量の国や企業は、余裕のある国や企業から排出権を買い取ることにより、権利
の売買をすることを指す。この制度は 1970 年代で米国で理論化され、90 年には米国で大気中の
硫黄酸化物(SOx)削減を企図して SOx の排出権取引が実施され、削減に成果を挙げた。この成
功から、地球温暖化の原因ガスである CO2 などの温室効果ガスに適用したものが、温室効果ガス

33
排出権取引であり、京都議定書では、温室効果ガスの排出権取引が第 17 条として採択された 3
つのメカニズム(京都メカニズム)のうちのひとつとして導入された。
排出権取引には大きく分けると Cap&Trade と Baseline&Credit の2つがあり、前者は、排出
量が設定されている企業同士が、規定量に対する余剰分を売買できる制度であり、Baseline&
Credit は、温室効果ガスの削減事業を行った場合、事業がなかった排出量にあるベースラインに
比べた排出削減量をクレジットとして取引できる方式である。取引形態には、一般的な商品取引
同様に、合意を取り交わしたときに引き渡しと支払いが行なわれる「現物(スポット)取引」の
ほか、未来の特定の日に引き渡す「先渡し取引」や、取引実施の選択権が含まれる「オプション」
取引が用意されている。また、投下資本に対する十分な投資回収率が期待され、且つ 排出権を取
得することが出来るプロジェクトに直接投資する「排出権プロジェクト投資」も可能である。こ
の際には、プロジェクトにより得られた排出削減が、プロジェクトが無かった場合(ベースライ
ンを)には得られたかったことおよび、既存の法律で定められた削減に対し、追加的であること
を証明することを証明した上で、プロジェクトのライフタイム全体を通じた排出削減のモニター
と第三者による検証を、売り手側が準備することになる。
この方式の課題は、排出権の配布を誰にどのように行うか?になる。公平性という点から課題
がおこりがちになるからだ。日本では、排出権の強制には、産業界の抵抗が考えられるので、経
団連の自主行動計画での目標値を設定し、国がキャップを課すわけではなく、産業界の目標を使
うなどの方法が考えられている。本論の 2030 年ビジョンで記載した、サステイナブルポイント
は排出権取引のしくみを、さらに、個々人レベルまで擬似的に展開するということを想定する為、
この導入に関する、公平性確保の議論や、横断的なガイドラインの作成の経緯は参考になる。

34
表4.排出量取引導入時の政府、産業界への影響

産業界
政府
規制対象者 排出権ビジネス

各企業、工場に排出権を割当て 目標以上に削減できれば排出 排出権関連ビジネスの売上増大



るため、ターゲットの排出対象を 権を売却できる。 (CO2 削減プロジェクトの開発業

コントロールすることが可能。 務、ブローカー、認証機関、省エネ

ルギー技術保有メーカー、排出権を

利用した金融商品)

・排出量取引制度を実施するコス 省エネ投資、海外での CO2 削 特になし。


ト(個別産業界・企業との目標設 減プロジェクトの実施、排出権

定の交渉、排出量のモニタリング 購入等のコストの発生。

制度の確立、取引所の創設)
。 ※ 排出量が設定されるとその

・モニタリングの必要があるた 対応が、コストとなる。

め、比較的大きな排出源での対応

になる(エンドユーザーへの付与
が難しい)

(三菱総合研究所の以下の Web サイト情報に加筆:http://www.mri.co.jp/COLUMN/ECO/NISHIMURAK/2004/0927NK.html)

35
第4章.サステイナブルポイントの KSF とロードマップ

4.1. 最初の一歩は、「魅力(ファッション性)」から
0 章で最良の開発ガバナンス方法として選択した、
「非公開ベンチャー」を選択した場合で考察
する場合、ビジネスでスタートすることから、このとき、注意すべきは、ベンチャー企業では、
まず必要なのは、技術ではなく、顧客である。技術開発のスピードは、キャッシュのスピードを
超えられないことである。もしも、並べ方を、
「環境評価の経済評価の組み込み手法の標準化」→
「インセンティブ設計:税金などとの連動 あるいは 政策的なルール設定」→「誰でもアクセ
ス可能な情報システムでの可視化」のように創り手の考えやすい順番で展開しようと考えると、
先行投資が大きくなり、
「キャッシュフローのスピードとバランスが同期化」できず、ベンチャー
企業に向いたアプローチとはいえない。

社会を動かす最初の KSF は、
「説得力」や「高機能」ではなく、
「魅力」である。一般的には、
新しいビジネスを導入するときは、まず、16%以上の人に使ってもらえるという数の確保が当初
の目標となる。
1962 年スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャース教授は、消費者の商品購入に対する
態度を新しい商品に対する購入の早い順から、1.イノベーター=革新的採用者(2.5%)
、2.オピニ
オンリーダー(アーリー・アドプター)=初期少数採用者(13.5%)
、3.アーリー・マジョリティ
=初期多数採用者(34%)
、4.レイト・マジョリティ=後期多数採用者(34%)
、5.ラガード=伝
(16%)の 5 つのタイプに分類した。16%を超えるとき、.アーリ
統主義者(または採用遅滞者)
ー・マジョリティにも受け入れられ始めたことを意味するからである。
どのようにしたら、アーリーマジョリティは購買を決めるのだろうか?マーケティング・コン
サルタントのジェフリー・ムーアは、イノベーターとアーリー・アドプター(=オピニオンリー
ダー)で構成される初期市場と、アーリー・マジョリティやレイト・マジョリティによって構成
される成長市場は、本質的に越え難い「キャズム(死の谷)
」があることを事例で示した。ムーア
は、キャズムを超えなくては、新しいアイディアは、規模の小さな初期市場でやがては消えてし
まうことを指摘し、ここで発想の転換が必要であるという。普及期の鍵を握る、アーリー・マジ
ョリティは「多くの人が採用している安心できる商品で他社に遅れをとらない」ことを望む層で
あり、
「他の人も使っている」ことを判断材料に商品購入を決定するので、ほんの一部のアーリー・
アドプターにしか採用されていないということは、アーリー・マジョリティに商品購入を踏みと
どまらせる理由にこそなれ、商品購入のきっかけにはならない。キャズムを超えてメインストリ
ーム市場に上陸するための最初の一歩として、ニアのものとしてではなく、みんなのものとして
再設計を行う必要がある。たとえば、適切なアーリー・マジョリティ層を一気に攻略する事例づ
くりと話題づくりも重要となる。

地域通貨が苦戦していることは3.1で示したとおりだが、地域通貨の概念が流行る数年前に
同類のこの試みで、当時23歳の若者が一人で仕掛けて、15 万人を動かしている事例がある。こ
の事例には、ムーアが指摘する発想の転換が見られる。

36
1998 年に、女子高生を 中心に 15 万部を売り上げたヒット商品に「heaven’s passport」は、
一〇〇個シールがたまれば、願い事が成就するという千円の「雑貨」パスポートそっくりの冊子
である。最初に「願い事」を記入する欄があり、その後に「いいこと」を一つすればシールを一
つずつ張っていく欄がついているものだ。
「キレる 17 歳」という社会の冷たい見
これをプロデュースしたオキタリュウイチ氏の動機は、
方への義憤からこのパスポートを考えたという。

みんなファッション感覚で悪いことをする。
ファッション感覚で○○する、本当は○○の中身はなんでもいいはず。
じゃあ…「いいこと」を「ファッション」にすればいい…。
そこで、自分の知っている「ブランドづくり」の知識と手法を総動員させることにしました。
そして、
「いいことを100コすると、願いごとがかなう」という「雑貨」をつくり、
千円で「こそっと」販売することにしました。奇襲戦でした。
1年くらい経って、エッジの利いた女子高生達が、反応し始めました。
その数、15万人。15万人の高校生達が、千円もの大金をはたいて、
100個の「いいこと」を始めたのです。
(http://www.posi-media.net/archives/000001.html)

インターネットには、
「高校生に時に「ヘブンパスポート」?だっけな?まぁ、パスポート風の手帳があって良い事を
する度にそこにシールを貼っていくの!!で、そのシールが 100 個溜まると願い事が叶うみたい
な(笑)ちょー必死にやったのを覚えてる(爆)

というユーザーの声や、
「荒れていた学校が、ヘブンズパスポートを生徒に配った後クラスでいじめがなくなった」
という成果などの記載が見られた。こうした話題が広がるとますます興味が興味を呼ぶ構造とな
る。

4.2. 現在から 2030 年までの変革ロードマップ


4.1.でレビューしてきた展開のドミノは、すなわち、事業計画そのものの展開シナリオで
あり、事業ロードマップとなる。その市場の原理に従い、成長し、周囲を統合して経済成長と狙
っているサステイナブルポイントの定着を両立させてゆくことになる。
イノベーションが起こるのは、ドミノのようにそれぞれ成功が連鎖するときである。まったく
新しいイノベーションを成功させるための KSF は、要素技術に新しいものを多数取り込まず、ド
ミノ倒しのように新しい効果が、次の効果につながる、価値の連鎖を生み出すときである。
たとえば、成功へ向けて、
制約1:魅力が足りない → 【小さなファンを創る】
制約2:実用性が足りない → 【出口を育てる】

37
制約4:ファンが足りない → 【ネットワークを育てる】
とひとつづつ、顧客側が引き込まれるソリューション群を準備することが重要になる。

以下では、以上の突破口になるドミノ倒しの要素の順番に、ひとつひとつ成功させる KSF を
2030 年までの時間軸に射影してみる。
2007年 フィージビリティスタディ
はじめに取り組むべき制約は、
「魅力が足りない」ことである、そこで、まずは、
【小さなファ
ンを創る】ことが必要になる。しかし、
「小さなファン」は小さければ何でも良いのではなく、
「1.
「2.成長後は出荷件数 100 万件レベルのシリーズの大きなヒ
立ち上がりに十分な市場規模」と、
ット商品になりうる潜在成長力」が求められる。このような用件に適う入り口を探索する必要が
ある。

この選択の一例として、巨大な市場である「ゲーム産業」に注目して事業計画を立案する。
はじめに、
「LCA」ベースの統合指標を楽しく考えるしくみとして、
「家計簿機能」アプリケー
ションに「環境家計簿」を追加したソフトウェアでエンターテイメントビジネスとして参入し、
その中で、サステイナブルポイントを導入した諸機能をビジュアルで楽しくファッショナブルに
訴求する。そして、そのアプリケーションでの儲けと人気を基に、
「SRI 投資」や「地域通貨」や
「SRI 投資」や「環境税」などをソフトウェアバージョンアップの中でアップグレードを図ると
いうアイディアだ。

・事業案: ポータブルゲーム機で動く「サステイナブル家計簿」
ここでの事業案は、NINTENDO−DS の通信機能付携帯ゲーム機を活用して、
「サステイナブ
ル家計簿」をサステイナブルポイントを集めるゲームとして開発することである。

ゲームとしての選択は、
「1.立ち上がりに十分な市場規模」という理由からである。
「サステ
イナブル家計簿」が持続的に開発され成功されるためには、NPO や政府機関が一度開発したもの
を我慢して多くの人が使うのではなく、ユーザーに魅力を提示して、どんどん利用者側の発展へ
の期待を刺激できるものでなければならない。この意味で、インターネットで無料でダウンロー
ドできるものではなく、商品化される必要がある。このためには、すでに成熟市場である通常の
電子家計簿との差別化が十分にできるものなければならず、ニッチセグメントからの参入になる。
すなわち、パーソナルコンピュータ上では、勝負が決しているので、例えば、ネットワーク機能
つきのポータブルゲーム機、携帯電話で勝負をすることが考えられる。

すると、2007 年度は着手前に、以下のようなフィージビリティスタディを行う必要があるだろ
う。
・世界の選考事例調査
・世界のゲーム市場/家計簿事例の機能サーベイ
・プロトタイピング

38
念入りな調査の結果、このゲームはどの年代のどのような人たち向けに開発すべきかが特定で
きるだろう。この対象に向けて商品として成功させるため、ゲームコンセプトや画面設計が練ら
れることになるだろう。ゲームだけで十分に「商品」になる可能性がなければならない。このた
めには、数百のシナリオの中から優れたアイディアが残す必要があるだろう。

Tipping Point:「サステイナブル家計簿」ソリューション

「はずみ」をつける、鍵になる入り口を 例)ボディケア、
徹底的に「世界観」として練り込み、 愛に結びつく
プレゼント
ジャンル・カテゴリーを創出する。

ターゲット:女性OL

統合プログラム
家計簿データ

コミュニティ作り
感想データ
Internet
ゲームシナリオ

レシートを読む 検索エンジン

LCA DB
女性OLが、ハマる、
・日常の利便性を目指しながら、
・癒される「ゲーム」づくり
→ シナリオを選択可能
11
・ 動物モノ、・利殖モノ、・恋愛モノ、・・・

図5.第1弾 ゲームプラットホームで動く「サステイナブル家計簿」

2010 年 サービスの開発(’08-’09)と販売開始(2010 年)!


ゲームのコンセプトワークだけではなく、実用性の実装をすることが今回の試みの要である。
次にデーター連携の提携作業フェーズである。
電子家計簿の KSF となるのは、
「入力の利便性」であるので、金融機関との連携のみならず、
流通事業者のポイントカードと連携して、直接、ユーザーに POS データ上の商品情報と支払い金
額を、もらえる仕組みを設計することが欠かせない。環境家計簿機能も同じく自動入力が重要で
ある。個々人の買う・買わないという意思決定の積み重ねが、家計という活動に影響を及ぼして
いるため、通常の家計簿の支出と、環境負荷の発生が表裏一体である。LCA ベースの評価を商品
提供側が容易に計算・開示できるしくみが不可欠である。
そこで、
・ サステイナブルポイントの視点においては、国や公共機関や海外の基礎 LCA データを入手
する。
・ レンタルショップやリサイクルショップ、レンタカー会社、鉄道貨物、など、エコだけど
それが売りになっていない(業態として他の業態として競合しているが、業態そのものと
しては環境が良い)事業者と提携して、使えば使うほどエコだというところをアピールで

39
きるしくみとして参加依頼をお願いする。
・ 家計簿と連携している流通事業者あるいは製造時業者に、重量情報や、LCA データの協力
を依頼する。
の順番での調整が、
「サービス」としての付加価値となっていくだろう。

一定のビジネスモデルができあがれば、開発途上でもリリースして段階的にファンを獲得して
ゆくことができると考えられる。

ところで、このサービスが一時のブームで終わるか、継続的なシリーズ化されたものとして社
会文化に定着しうるかは、ユーザーからみたとき、手放せない、
「ねばり」があるかどうかにある
だろう。
このねばりは、
「わくわく感」と「実利」の2つがあると考えられる。
「わくわく感」は、アニメーションや、アーティスト、あるいは、新しい発明のように、毎回
新しい視点を示してくれるもので、ファンが形成されると根強い。環境家計簿機能で、家庭での
ベースラインが出てくると、その結果を、眺めているだけではなく、あたらしいわくわくする挑
戦できる機能が欲しくなる。
また、脂肪測定体重計、加湿器、マッサージ装置などは「実利」の商品である。
「実利」の商品
は生活に欠かせないために一度定着したらなかなか容易に置き換わらない。
おそらく、われわれの試みでは、成功をより確実にそして長期のものとするために、この両方
を採用するのではないだろうか?

まず、実装が簡単なのは、わくわく感である。わくわく感は、物語性やファンタジー性など感
情に由来することもあるだろうし、パズルやシューティングのように反射神経に訴える場合もあ
る。

たとえば、日常を壮大な叙事詩のように歌い上げることができるかもしれない。
その日一日、ある年一年の活動で、トータルで犠牲になった、牛・豚・鳥、自然の大きさが、
「サマリの物語」として可愛いキャラクターやリアルのビジュアル映像でわかり、その映像の「わ
かりやすさ」
「かわいさ」を話題づくりにし、
「売り」にする必要があるだろう。

たとえば、
「商品の『思い出』がわかる」機能。
商品の上にカーソルを載せると、その商品ができるまでに携わった人の「思い」や商品が見
た風景を、ビデオで流したり、Google Earth 上で、商品の部品の調達の移動が見えるなどの「お
もしろさ」で、商品の舞台裏を覗ける機能を追加したい。
そのときの編集方針のキーメッセージとして、筆者は、
「ありがたさ」
「すばらしさ」という商
品がより心深くささり、愛せるための素材にする一方、環境負荷などについても明らかにわかる
ようにしてゆきたい。この際の鍵は、このワンショットの素材を作るためのアーティストや投資
費用である。

40
こうした開発費用を捻出するためには、良きも悪きも津々浦々に知らせることで、商品を愛し
つづけるという新たな「プロモーション手法」を確立すること、その際に、サービスビジネスも
含めた顧客の TCO の削減と、企業側のキャッシュフロー改善につながる「サービスビジネスモデ
ル」を当社が準備することになるだろう。

次に、実利を、考えよう。最も重要な実利とは、自然資本への毀損が減ることである。しかし、
個人としての実利は、有料のゴミが無料化、
「排出権取引」
、SRI 投資、地域通貨などの、出口を
追加することで、実利としての広がりがあるかもしれない。トレード機能、オークション機能な
ど、サステイナブルポイントの活用の楽しい部分をこれにアドオンすることで、実利的な中にも
わくわく感を演出することが可能になるだろう。

▼排出権取引
それぞれの家庭単位での、削減活動を、
「CO2削減プロジェクト」としてみなし、毎年の削減
量を「排出権取引」を仮想的に(あるいは実現的に)可能にすることで、特にインテリジェント
層に対して、
「環境家計簿」をつける、そして、つけ続ける、インセンティブとなると思われる。
ゲーム感覚でもっとスコアを欲しくなるように、達成意欲を高めることで、ユーザーの気持ちを
より、
「楽しさ」で、サステイナブルポイントを高めたいと思う方向へ変えることにつながるだろ
う。

▼「SRI 投資」ファンドとの連携
サステイナビリティポイント確保の一環として、
「SRI投資」ファンドが位置づけられるだろ
う。通常、SRI 投資は、反社会的な資金運を行うのが難しい公共機関向けであるが、サステイナ
ビリティに興味がある個人が増えてくると、個人向けの SRI 投資が実現可能になる。すでに、市
民風車ファンドなどで、一部では成功を見せているが、個人の資金の運用の方法として、個人が
共感できるさまざまなボトムアップからの SRI 投資案件が今後、登場することも可能になるだろ
う。こうした「ボトムアップ」での投資の「実現の鍵」は、多様なおもしろみのある SRI 投資物
件を増やすことにあるだろう。このためには、以下のような活動を行い補う必要があるだろう。
・トリプルボトムライン視点からの事業活動を促す、SRI インキュベーションファンドの生成
・SRI につながる事業計画書の立案力(社会貢献度の高い事業者の事業計画書力養成)
・一般事業者の社会貢献性の高い事業への参入の促進
特に、事業成長を犠牲にしてもいいから、環境に良いこと、社会に良いことをしたいト考える
事業者にとって、欠かせないファンドになる。そのうち一社は、当社である。

▼地域通貨との連携
「地域通貨」は、ゲームポイントとして活用できるようになるかもしれない。

2012 年 検証
ここで、ふと冷静になる時期が必要である。
販売実績を見て、そして、当初の目的に向かっているか?の検証である。

41
もしも、売れ行き好評であれば、そして、目的にきちんと向かっていれば、次へ進むことができ
る。ここまでが、おそらく「試み」の成否を問われる結果になるだろう。
成功するベンチャーのように「当たっていれば」
、以降を続けることができる。もしも、売れ行
き好評であれば、携帯ゲームだけではなく、すでに、次々と異なるプラットホームに同じ機能を
展開していることだろう。そして機能強化し、ユーザーを殖やすとともに、そのころには現れて
いるだろう類似他社との差別化を推進し、完成度を高めているだろう。
一方で、うまくいっていなければ、ここで清算するのが妥当である。

2013 年 海外サービスへの展開
この事業は、ある国に限定せず、多言語対応、世界規模での広がりを持たせることが不可欠で
ある。なぜならば・・・
1.環境問題は一国の問題ではない
2.言語の壁が薄れている今、市場がグローバル化しているため、分断が難しい
3.情報源を世界で広く集めてゆきたい
からである。そこで、活動当初より、世界の市場をターゲットにすることを、マイルストーンに
おいておきたい。
機能を磨き、世界の競合と戦う必要がある。そして、急速に、第2章のような世界を構築する
フェーズになる。
この場合、ベンチャー企業として、重大な選択を迫られることになる。
すなわち、資本調達をうまくやってのけることである。
外資のパワーに適うだけの、資本力・開発力・展開力が必要になるからである。
このとき、当初想定していた、
「非公開のベンチャー」がどこまで守られるかが、重要な鍵となる。
当社は、自らが展開した、
「サステイナブルポイント」の仕組みを使って、資金を募集し、株式非
上場のまま、安い金利の資金調達を実現する挑戦ができるかもしれない。あるいは、この試みが
敗れると、CSRファンドからの調達あるいは、通常の資金調達となるだろう。いずれにせよ、
このプログラムの本質が試されるときである。

この資金調達が成功した暁には、その後のサービス範囲は、
「全世界」となる。
以下に例を示す。

▼全世界のマイクロファイナンスとの連携
世界の貧しい人たちへ投資することで、サステイナブルポイントを取得できるようになる。

▼全世界の「地域通貨」の連携
サステイナブルポイントとして「仕入れられる」手段が必要になると、地域で流通に挑戦して
きた、
「地域通貨」をバリュエーションして、二酸化炭素削減効果を認証し、
「地域通貨」との「為
替レート」を設定して交換ができるようにできるようになる。
「地域通貨」は、先に触れているよ
うに、供給過剰で、用途不足になっているため、地域通貨にとっては、この連携が「需要」のひ
とつになると思われる

42
サステイナブルポイント機能が、十分な充実を見せてくると、サステイナブルポイント機能そ
のものがネットワーク機能を具有するようになり、あたかも、
「地域通貨」と同様な位置づけにな
る。サステイナブルポイントと地域通貨が連携されることになれば、
「地域通貨」のバリュエーシ
ョンの方法のひとつとして、地域通貨主体に、地域通貨で発行する際の「総活動」を把握してい
ただき、それ全体を1プロジェクトとしてみなし、二酸化炭素削減効果を全体として認証する。
為替レートには、全体効果を発行量で割りかけることで、地域通貨1単位あたりの二酸化炭素排
出量を算定することができる。二酸化炭素排出量につながらない、その他の指標についても、サ
ステイナブルポイントと連携することもできる可能性もある。

▼全世界の「環境税」との連携
サステイナブルポイントが広域に普及にし、全体の家計簿の予算割合中、サステイナブルポイ
ントの対象になっている割合が高まり、地域活動が取り込めてくると、地方自治体や政府との連
携が考えられるようになる。例えば、
「廃棄物処理費用」や「公立施設」などの利用が、サステイ
ナビリティポイントと連携すれば、このポイントを貯めるメリットとなるだろう。また、サステ
イナブルポイントが標準(デファクト)になれば、
「環境税」の指標ともなり、課税の指標にもな
るだろう。公共機関との連携の成功の KPI は、すでに、圧倒的な普及での標準といえるか否かに
なると思われる。これは、パーソナルコンピュータのオペレーションシステムにマイクロソフト
の Windows が広く使われていることと理由を同じである。

2015 年 対企業評価、対地方自治体運営評価への展開
一定の家計の市場この事業が普及した場合、その上位の市場として対企業向けの評価や、対自
治体運営評価などの、より上位の市場への普及が考えられるだろう。
なお、事業計画で 5 年以上を想定するのは極めて困難であるため、2015 年以降は、省略する。
ここまで到達しておれば、2030 年に第 2 章で描いたようなビジョンがとなる、
「はずみ」はつ
いていると思われる。

2020 年 サステイナブルポイント国連で採用:世界標準へ
当プログラムのビジョンへのいよいよの到達。
∼自然資本、文化資本、社会資本などの、非経済資本の価値のうち、優先順位に従って選択され
世界に順次展開されてゆく・・。∼

2030 年 サステイナブルポイント国連採用 10 周年
日常化。第 2 章で描いた、世界への到達!

以上

43
参考文献/参照先 URL 一覧

3.1.1. 地域通貨・エコポイントとは?
Wikipedia「地域通貨」の項目を参照:
URL: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E9%80%9A%E8%B2%A8

「地域通貨」一覧
徳留佳之氏の Web サイト
URL: http://www.cc-pr.net/list/

アースデイ・マネーアソシエイション(ホームページ)
URL: http://www.earthdaymoney.org/

「やってみようよ!地域通貨∼地域通貨導入の手引き NPO・ボランティアセンター
URL: http://www.nvc.pref.fukuoka.lg.jp/topics_osusume/chikituka_dounyu/dounyu.htm

北九州市の環境パスポート事業について 総務省(2005 年)
URL: http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/pdf/t_model_sys_1_s05_01.pdf
URL: http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/pdf/t_model_sys_1_s05_02.pdf)
URL: http://www.wagamachigenki.jp/saisei/02_07.htm

3.1.2. 地域通貨・エコポイントの課題:限定だからこそのサービスは何か?
(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター2003 年 6
「ローカル通貨研究会報告書」
月)
URL: http://www.glocom.ac.jp/project/lc/LocalCurrencyReport.pdf

3.3.2.外部価値を算定するいくつかの手法
SROIの計算方式 REDF(The Roverts Enterprise Development Fund)
URL: http://www.redf.org/publications-sroi.htm)

EEBE(External Economic Benefit Evaluation) クラブエコファクチュア


URL: http://www.ecofacture.com/eebeguideline/

3.4.1.「環境税」の導入の反発

「環境税」の導入に反対する」
((社)日本経済団体連合会)
URL: http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/112.html

3.4.2.排出権取引
排出量取引導入時の政府、産業界への影響 三菱総合研究所(2004 年 9 月)

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URL: http://www.mri.co.jp/COLUMN/ECO/NISHIMURAK/2004/0927NK.html
4.1. 最初の一歩は、
「魅力(ファッション性)
」から
「キャズム」ジェフリー・ムーア (著), 川又 政治 (翻訳) 翔泳社 (2002/1/23)

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