148 Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol. 47, No.

2, 148∼154 (2000)〔 技 術 論 文 〕 (88)

ヤ ー コ ン ジ ュ ー ス の 清 澄 化,脱 色,脱 臭 及 び フ ラ ク トオ リゴ糖

含 量 に及 ぼ す 粉 末 活 性 炭 処 理 の影 響

本 堂 正 明*・ 中 野 敦 博*・ 奥 村 幸 広*・ 山木 携*

Effects of activated carbon powder treatment on clarification, decolorization,

deodorization and fructooligosaccharide content of yacon juice

Masaaki HONDO*, Atsuhiro NAKANO*, Yukihiro OKUMURA* and Tazusa YAMAKI*

*Hokkaido Food Processing Research Center

, 589-4, Bunkyodai Midori-machi,
Ebetsu-shi, Hokkaido 069-0836

Fructooligosaccharides, which are mainly contained in yacon tubers, are known for their ability
to keep intestines healthy. Therefore, the juice pressed from yacon tubers is expected as a sweetener
containing natural fructooligosaccharides. However, the juice is usually unsuitable for beverages
due to being cloudy, grassy and colored. In this study, the juice was successfully clarified,
decolorized and deodorized by the treatment with activated carbon powder under the most desirable
condition. Six activated carbon powders, SD, BA, TW, ZN,TA and KA, were tested (SD, BA, TW and
ZN are commercial names of activated carbon powders produced by HOKUETSU TANSO KOGYO Co.
Ltd. TA and KA are abbreviated names. The first is activated carbon powder from TAKEDA
YAKUHIN KOGYO Co. Ltd. for decolorization and purification of SAKE. The second is activated
carbon powder from KANTO KAGAKU Co. Ltd. for commercial reagents). The filtrated juice was
measured for transmittance, soluble sugar and so on after stirring with each activated carbon powder
for an hour at room temperature. Almost colorless, transparent and odorless juice was obtained by
an addition of 2 to 3% of activated carbon powders ZN and TA. Both activated carbon powders had
larger bulk volumes (>3ml/g) than others. Under the above conditions, fructooligosaccharides
remained from 89% to 94% in the juice. From these results, ZN and TA among 6 activated carbon
powders were suitable for practical use. (Received Aug. 4, 1999; Accepted Oct. 21, 1999)

ヤ ー コ ン(Polymnia sonchifolia)は 南 ア ンデ ス地 方 の 良 い加 工 用 途 の 開 発 が 強 く望 ま れ て い る.こ れ ま で加

原 産 キ ク科 の 多年 性 植 物 で あ る.塊 根 の形 は サ ッマ イ モ 工 例 と して は漬 物 や ジュ ー ス等 が あ る の み で あ り,ま た
に類 似 し,酸 味 は な い が,甘 み が あ り,食 感 は ナ シの よ 加 工 に関 す る研 究 報 告6)は ほ とん どみ られ な い.
うに サ ク サ ク と し,野 菜 と果 物 が 一 緒 に な った よ うな根 本 研 究 で は塊 根 が 多 汁 質 で あ り.処 理 が容 易 な こ とか

菜 で あ る. ら,ジ ュ ー ス の 利 用 を 図 る こ と を 目的 と した.一 般 に
寒 冷 地 に もよ く生 育 で き る こ とか ら,北 海 道 の地 に お い ジ ュ ー ス調 製 時 に は,酸 化 酵 素 に よ る着 色 を 防 ぐた め,

て も新 規 作 物 と して 栽 培 され て い る. ビ タ ミンCや レモ ン果 汁等 が 添 加 され て い るが,ジ ュ ー

塊 根 中 に は整 腸 作 用 を有 す る フ ラ ク トオ リ ゴ糖1)が 多 ス は 青 臭 み が あ り,濁 り,透 明 感 は な く必 ず し も品 質良

量 に含 ま れ て お り,最 近 健 康 野 菜 と して 注 目 さ れ て い 好 と は言 い 難 い.こ の よ う な こ と か ら粉 末 活 性 炭 を 用 い
る2)∼4).こ の た め生 食 用 と して の 需 要 が 伸 び て い る が, て 一 挙 に 清 澄 化,脱 色 と脱 臭 を行 い,ほ ぼ無 色 透 明無 臭

貯 蔵 性 が悪 く5),流 通 期 間 に も限 界 が あ るた め,保 存性 に 近 い ジ ュ ー スを 調 製 す る方 が,見 た 目 もよ く各種 用途

*北 海 道 立 食 品加 工 研 究 セ ンタ ー(〒069-0836江 別 市 文京 台 緑 町589番 地4)
 (89) 本 堂・ 他:ヤ ー コ ン ジ ュー ス の 清 澄 化 149

に も利 用 で き,他 の食 品 素 材 に容 易 に混 合 で き る と思 わ 分 光 光 度 計 を用 い,420nmの 波長で透過 率を測定 し

れ る.そ こで 無 添 加 で調 製 した ジュ ー ス を 用 い.フ ラク た.
トオ リゴ糖 の 損 失 が 少 な く,ま た 同 時 に 清澄 化,脱 色 と (2) 一 般 成 分
脱 臭 が 可 能 な条 件 を見 い だす た め に粉 末 活 性 炭 の 種類 と 水 分 は,常 圧105℃ 乾 燥 法,全 窒 素 は ケ ル ダー ル窒 素
添 加 量 の 関 係 を検 討 した. 分 解 法,灰 分 は550℃ 直 接 灰 化 法 に よ り,い ず れ も常
法7)に 従 って 分 析 した.
実 験 方 法
(3) 糖 質
1.供 試 材 料 と ジ ュ ー ス の調 製 試 料 を0.45μmの フ イ ル タ ー で ろ 過 後,高 速液 体 クロ

平 成2年11月 と平 成3年11月 に収 穫 さ れ た 置 戸 町 産 マ ト グ ラ フ ィ(以 後,HPLCと 略 記)5)6)で 測 定 し た .以

ヤ ー コ ンを 用 い た.塊 根 約20kgを 水 洗,水 切 り,剥 皮 下 に 分 析 条 件 を 示 す.ガ ー ドカ ラ ム;TSKガ ー ドゲ ル

後,破 砕 機 で 破 砕 し,油 圧 プ レス で圧 搾 した.得 られ た Amide-80(3.2mmI.D.×15cm),分 離 カ ラ ム;TSKgel

ジ ュ ー スを.湯 水 中 で85℃・15分 加 熱 処 理 後,水 道 水 で Amide-80(4.6mmI.D.×25cm),試 料 注 入 量;20μl,流

急 冷 し,さ ら しで ろ過 した もの を使 用 した. 速;0.5ml/min,カ ラ ム 温 度;80℃,移 動 相;70%ア セ

2.供 試粉末活性炭 トニ ト リ ル 溶 液(v/v),検 出 器;示 差 屈 折 計,標 準試薬

以 下 に示 す6種 類 の粉 末 活 性 炭 を用 い た.北 越 炭 素 工 と して フ ル ク ト ー ス,グ ル コ ー ス,ス ク ロ ー ス,1-ケ ス

業 製 で 銘 柄 名 がSD,BA,TW及 びZNの 粉 末活性 炭 を ト ー ス と ニ ス ト ー ス を 用 い,こ れ ら の 混 合 溶 液 よ り,そ

用 い た.そ れ ぞ れ の 特 性,粒 度 及 び用 途 を記 す. の つ ど 検 量 線 を 作 成 し て,試 料 中 の糖 質 含 量 を 測 定 し

SDは,最 高 純 度 の もの で,吸 着 能 が 高 く,ミ ク ロポ た.た だ し,5糖,6糖,7糖 と8糖 の フ ラ ク トオ リ ゴ糖

アー を 有 し,200メ ッ シ ュ(=74μm)の ふ る い を90% 含 量 は ニ ス ト ー ス の 検 量 線 を 使 用 し て 求 め た.

以 上 通 過 し,し か も25μmの ふ る い を約50%通 過す る (4) 全 ポ リフ ェ ノ ー ル

もの で,主 に医 薬 用 で あ る.BAは,高 純 度 の もの で,ろ 全 ポ リ フ ェ ノ ー ル 含 量 の 測 定 はSingleton&Rassiら

過 性 が 良好 で,ミ ク ロ ポ ア ー及 び同 上 の粒 度 を有 し,清 の 報 告 を 一 部 改 変 した 米 山 ら の 方 法8)に よ っ た.す なわ

酒・ 醸 造 用 や 脱 色・ 精 製 用 で あ る.TWは,精 製 炭 を使 ち,蒸 留 水 で2倍 に 希 釈 した フ ェ ノ ー ル 試 薬(和 光純薬

用 した もの で,ろ 過 性 が 良 好 で,ミ ク ロ ポ ア ー及 び 同上 製)0.5mlに,試 料0.5ml,0.4M炭 酸 ナ トリウ ム溶 液

の粒 度 を有 し,汎 用 工 業 薬 品 精 製 用 で あ る.ZNは,脱 色 2.5mlを 加 え,50℃,5分 間 反 応 さ せ た 後,直 ち に流 水 中

力 が 優 れ,マ ク ロ ポ ア ーを 有 す るが,同 上 の粒 度 を示 し, で 冷 却 し,765nmの 吸 光 度 を 測 定 し た.標 準物質の没

糖 脱 色 用 で あ る.武 田 薬 品 工 業 製 の もの は粒 度 や ポ ア ー 食 子 酸 を 用 い た 検 量 線 よ り,全 ポ リフ ェ ノ ー ル含 量 を 定

の 性 状 は不 明 で あ る が,清 酒 脱 色 清 浄 用 で あ る.以 後 量 し た.

TAと 略 記 す る.関 東 化 学 製 の市 販 試 薬 品 は.74μmの (5) 香 気 成 分

ふ る い を90%以 上 通 過 し,し か も20μmの ふ るい を 1) 香 気 成 分 の 分離 と濃 縮
47%通 過 す る もの で あ る,以 後KAと 略 記 す る. 香 気 成 分 濃 縮 は下 田 ら9)が最 初 に報 告 し,坂 本 ら10)が
3.粉 末活性炭 のかさ容積 清 酒 香 気 成 分 濃 縮 に 用 い た ポ ラパ ックQカ ラ ム濃 縮 法

粉 末 活 性 炭 を メ ス シ リン ダー(50ml容 目盛 り付 き) で行 った.す なわ ち,ポ ラパ ックQ充填 剤(50∼80メ ッ

に少 しずつ 入 れ,10mlの 目盛 りま で,で き るだ け隙 間 シュ,Waters製)を ガ ラ ス カ ラ ム(内 径 Φ20mm,長 さ

が で き な い よ うに,密 に 充填 した.単 位 体 積 当 た りの 粉 10cm)に 充 填 し,ジ エ チ ル エ ー テ ル100ml,メ タノー

末 活 性 炭 の重 量 と して み か け密 度(g/ml)を 求 め,そ の ル50ml,蒸 留 水50mlの 順 で 洗 浄 して カ ラ ムを 調 製 し

値 の 逆 数 を か さ容 積(ml/g)と した. た.次 に100mlの 試 料 液(未 処 理 ジ ュー スの 場 合 に は,

4.粉 末 活 性 炭 に よ る ジ ュー ス の 処 理 遠 心 分 離 して 沈 殿 物 を 除 去 した もの を 用 い た.)を カラ
ジ ュ ー ス100mlに 各 粉 末 活 性 炭(そ れ ぞ れ1,2,3, ム に流 し,香 気 成 分 を 吸着 させ た 後 蒸 留 水 で 洗 浄 した .

4及 び5g)を 添 加 し,こ れ を 室 温 で ス タ ー ラ を 用 い て1 そ の後 カ ラム に吸 着 さ れ た 香 気成 分 を ジエ チ ル ェ ーテ ル

時 間攪 は ん 後,No.5Cの ろ 紙 で 吸 引 ろ 過 し た.得 られ 50mlで 抽 出 した.抽 出操 作 は室 温 で 行 い,抽 出液に内

た ろ 液 を 粉 末 活 性 炭 処 理 ジ ュ ー ス と し た. 部 標 準 液 と して1%シ ク ロヘ キ サ ノ ー ル 水 溶 液10μlを
5.分 析方法 添 加 し,無 水 硫 酸 ナ トリウ ム溶 液 で脱 水 後,40℃ の恒 温
(1) 透過率 水 槽 中 で 約500μlま で 濃 縮 した.カ ラムの再生 はメ タ
 150 日本 食 品 科 学 工 学 会 誌 第47巻 第2号2000年2月 (90)

ノ ー ル50ml,続 い て 蒸 留 水 で50mlを 流 し て 行 っ た. た.試 料 は1μlを 注 入 し た.試 料 注 入 口 温 度 は230℃,

な お 吸 着,抽 出 と再 生 の 操 作 は い ず れ も,300ml容 の シ カ ラ ム 温 度 は50℃ か ら230℃ ま で,3℃/分 で 昇 温 し た.

リ ン ジ を 用 い て 空 気 で 加 圧 し な が ら迅 速 に 行 っ た. キ ャ リ ア ー ガ ス は ヘ リ ウ ム ガ ス を 使 用 し,ス プ リ ッ ト比

2) ガ ス ク ロマ トグ ラ フ イ に よ る香 気成 分 分 析 1/20,カ ラ ム 内 線 速 度 は30cm/秒 と し た.

ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ イ(以 下,GLCと 略 記)に よ る分 6.粉 末 活 性 炭 処 理 ジ ュー スの 官 能 評 価

析 条 件 は 坂 本 ら の 報 告10)に 準 じ た.GLC装 置 は 未 処 理 ジ ュー ス の 濁 り,色 と香 り を基 準 に し,以 下 の
SHIMADZU製 で 本 体 はGC-14A,デ ー タ処 理 装 置 は, 3段 階 で 粉 末 活 性 炭 処 理 ジ ュー ス を評 価 した.濁 り;濁
ク ロ マ トパ ッ クCR-4A,検 出 器 はFIDを 使 用 し た. りが と れ て い な い,濁 りが 多 少 残 って い る,ほ ぼ透 明 で
キ ャ ピ ラ リ ー カ ラ ム はCBP-20(SHIMADZU製,PEG- あ る,色;ほ とん ど脱 色 さ れ て い な い,少 し色 が残 って
20M相 当 品,30m×0.32mmI.D.,膜 厚,0.25μm)を 用 い い る,ほ ぼ無 色 で あ る,香 り;ほ と ん ど脱 臭 され て い な

Table 1 Bulk volume of activated carbon powder

(ml/g)

SD, BA. TW and ZN are commercial names of ac-

tivated carbon powders produced by HOKUETSU
TANSO KOGYO Co. Ltd.
TA and KA are abbreviated names.
The first is activated carbon powder from
TAKEDA YAKUHIN KOGYO Co. Ltd. for decolo-
rization and purification of SAKE.
The second is activated carbon powder from
KANTO KAGAKU Co. Ltd. for commercial rea-

gents.

Fig. 2 Gas chromatograms of volatile com-

pounds from yacon juice obtained by
the Porapak Q column concentration
method
(A) Juice without treatment
(B) Juice after 5% activated carbon powder
(ZN) treatment
Peak number: 1. Cyclohexanol (internal stan-
dard)
2. Butyl hydroxy toluene (an-
tioxidant in ether)
GLC conditions :
capillary column, CBP-20 (0.32mm I.D.×30m.,
Fig. 1 Changes in transmittance of yacon juice film thickness, 0.25μm); column tempera-
by activated carbon powder treatment ture, 50℃ to 230℃ (3℃/min); Helium carrier

gas flow rate, 30cm/sec; split ratio, 1/20;

detector, FID; sample injection volume, 1μl.

 (91) 本 堂・ 他:ヤ ー コ ン ジ ュ ー ス の清 澄 化 151

い,青 臭 さが 多 少 残 って い る,ほ ぼ 無 臭 で あ る. 小 さ く,ほ とん ど香 気 成 分 が 除 去 さ れ て い る こ とが 確認

さ れ た.
実 験 結 果 と考 察
3.ジ ュー ス 成 分

1.粉 末 活 性 炭 の か さ容 積 1)  水 分,全 窒 素 と灰 分

Table 1に 粉 末 活性 炭 の か さ容 積 を 示 した.か さ容 積 Table 2に ジ ュ ー ス の水 分,全 窒 素,灰 分 と粉 末 活性

が3以 上 を示 すZNとTAと そ れ以 下 のSD,TW,BA 炭 の種 類 と添 加 量 の 関 係 を示 した.水 分 は ジ ュー ス成 分

とKAの 二 つ の グ ル ー プ に分 け られ た.ZNとTAは か の 吸着 に よ る減 少 で,全 て の処 理 で増 加 した.3%よ り

さ容 積 の大 き い粉 末 活 性 炭 で あ った. 5%の 添 加 で 更 に 増 加 したが,種 類 に よ る差 は ほ とん ど

2.ジ ュメ スの 清 澄 化,脱 色 と 脱 臭 な か った.全 窒 素 は3%添 加 で 全 て の 処 理 で 減 少 した
1)  清 澄 化 と脱 色 が,種 類 に よ る差 は ほ とん ど な か った.一 方 図 に示 して
Fig.1に ジ ュー ス の 透 過 率 と粉 末 活 性 炭 の 種 類 と添 加 い な い が,未 処 理 ジ ュ ー ス と処 理 ジュ ー ス の ホ ル モ ー ル

量 の 関 係 を 示 した.明 らか に粉 末 活性 炭 の 種 類 に よ り清 態 窒 素 は,0.04∼0.05%(w/w)で,ほ ぼ 同一 で あ った.

澄 化 と脱 色 に 差 が 認 め られ た.ZNとTAの 処 理 で は, この こ とか らい ず れ の 粉 末 活 性 炭 処 理 で もア ミノ態 窒素

ほぼ2,3%の 添加 で,BAとTWで は4,5%の 添 加 で, 成 分 は ほ とん ど吸 着 され な い こ とが 認 め られ た.し か し

透 過 率 は約90%に 達 し,ジ ュ ー ス は ほ ぼ 無 色 透 明 に Table 2か ら3%添 加 で全 窒 素 が減 少 して い るた め,非
な った.SDとKAは5%の 添 加 で も,完 全 に は脱 色 さ ア ミノ態 窒 素 成 分 が 粉 末 活 性 炭 処 理 に よ り吸 着 され た こ
れ な か っ た.以 上 の結 果 か らTAとZNが 有効な粉末活 と を 示 し て い る.灰 分 は いず れ の処 理 で もほ ぼ変 化 が な

性 炭 と考 え られ た.ま た か さ容 積3以 上 の 粉 末 活 性 炭 が く,ミ ネ ラ ル 成 分 は ほ と ん ど 吸 着 さ れ な か っ た.

清 澄 化 や 脱 色 に よ り効 果 の あ る こ とが 示 唆 され た. 2) 糖質

2)  脱 臭 根 菜 中 の 糖 質 は,Ohyamaら11)に よ っ て,フ ル ク トー

透 過 率 の 結 果 と香 りの官 能 評 価 が ほ ぼ 一 致 した.す な ス,グ ル コ ー ス,ス ク ロ ー ス と3糖 か ら10糖 までの フラ

わ ちZNとTAの 処 理 で は,2,3%の 添 加 で,BAと ク トオ リ ゴ糖 が 存 在 す る こ と が 明 らか に さ れ て い る.本

TWで は4,5%の 添 加 で,そ れ ぞ れ ほ ぼ 無 臭 とな っ た. 研 究 で は 測 定 はHPLC法 に よ っ た.図 に 示 して い な い

清 澄 化 と脱 色 の結 果 と 同様,か さ容 積 が3以 上 のZNと が,ゲ ル ろ 過 法(TSKgelG-oligo-PWカ ラ ム,東 ソー

TAの 方 が脱 臭 に 効 果 の あ る こ とが 示 唆 され た.ま た官 製)と 分 配 法(TSKgel Amide80カ ラ ム,同 上)共 に,

能 評 価 の 結 果 を確 認 す る た め,未 処 理 ジ ュー ス と5%添 8糖 に 相 当 す る ピ ー ク ま で 明 確 に 認 め ら れ た.後 者 の分

加ZN処 理 ジ ュ ー ス の 香 気 成 分 プ ロ フ ァイ ル を 比 較 し 析 結 果 か ら フ ル ク トー ス,グ ル コ ー ス,ス ク ロ ー ス,1-

た.Fig.2に 示 され た 結 果 か ら,5%添 加 で は ピ ー クが ケ ス トー ス,ニ ス トー ス,5糖,6糖,7糖 と8糖 は,そ

Table 2 Changes in moisture, total nitrogen and ash contents of yacon juice by activated carbon
powder treatment
(%)
152 日本 食 品 科 学 工 学 会誌 第47巻 第2号2000年2月 (92)

Fig. 3 Changes in soluble sugar content of yacon juice by activated carbon

powder treatment

HPLC conditions:
guard column, TSK guardgel Amide-80 (3.2mm I.D.×15cm); analytical column,
TSKgel Amide80 (4.6mm I.D.×25cm); mobile phase, 70% acetonitrile sln (v/v);

pump flow rate,0.5ml/min; column temperature, 80℃; detector, RI; sample

injection volume, 20μl.

Total fructooligosaccharides:
total content of fructooligosaccharides in polymerization from 3 to 8.
Relative%:
sugar content in juice with treatment ×100
100-
sugar content in juice without treatment
 (93) 本 堂・ 他:ヤ ー コ ン ジ ュ ー スの 清 澄 化 153

れ そ れ,4.1,1.9,0.8,1.6,1.8,1.0,0.5,0.3と0.2%(w/

v)で あ っ た.全 フ ラ ク ト オ リ ゴ 糖(3糖 ∼8糖 まで の 総

量,以 下 同 様)は ジ ュ ー ス100ml中5.4gで,全 糖質 の

約44%を 占 め た.

Fig.3に 各 糖 質 含 量(相 対%表 示)と 粉末活性炭の種

類 と 添 加 量 の 関 係 を 示 し た.そ の結 果 糖 質 の 変 化 パ タ ー

ン は4つ に 分 け ら れ,透 過 率 の 結 果 と 一 致 した.

ZNとTAの 処 理 で は,フ ル ク トー ス と グ ル コ ー ス は

ほ と ん ど 減 少 し な か っ た が,ス ク ロ ー ス と 全 フ ラ ク トオ

リ ゴ 糖 は 減 少 し,4,5%添 加 で は 後者 の 糖 が よ り減 少 し

た.
一 方 ,BAとTWの 処 理 で は,フ ル ク トー ス と グ ル

コ ー ス はZNとTAの 処 理 と 同 様 に,減 少 しな か っ た.
Fig. 4 Changes in absorption ratio of total
ス ク ロ ー ス と 全 フ ラ ク トオ リ ゴ 糖 は,ZNとTAの 処理
polyphenolic substance content in
と は 逆 に,前 者 の 糖 が よ り減 少 し た. yacon juice by activated carbon powder
他 方,SDの 処 理 で は,フ ル ク トー ス,グ ル コ ー ス と全 treatment
フ ラ ク トオ リ ゴ 糖 は ほ と ん ど 減 少 し な か っ た が,ス ク

ロ ー ス は 減 少 し た.
Absorption ratio (%)
KA処 理 で は,全 て の 糖 質 が 減 少 し,SD,BAとTW
total polyphenolic substance content in juice
の 処 理 と 同 様 に ス ク ロ ー ス が 最 も減 少 し た.
total polyphenolic substance content in juice
3) 全 ポ リフ ェ ノ ー ル with treatment
×100
未 処 理 ジ ュ ー ス100ml中 の 全 ポ リフ ェ ノ ー ル含 量 は without treatment

85.1mgで あ っ た.こ れ は着 色 の 原 因物 質 の 一 つ で あ り,
保 存 も し くは加 熱 処 理 時 に着 色 を 促進 させ る可 能 性 が あ
要 約
る の で,こ れ を よ り多 く吸着 で きれ ば,着 色 抑 制 や 脱 色
に効 果 が あ る粉 末 活 性 炭 と考 え られ る. ヤ ー コ ン ジュ ー ス 中 に は 多量 の フ ラ ク トオ リゴ糖 が 含
Fig.4に 全 ポ リフ ェ ノ ー ル成 分 の吸 着 率 と粉 末 活 性 炭 まれ,天 然 の フ ラク トオ リゴ糖 入 り機 能 性 甘 味 飲料 素 材
の 種 類 と添 加 量 の関 係 を示 した.吸 着 率 の 変 化 パ ター ン と して 有 望 で あ る.し か し ジュ ー ス は濁 りや青 臭 み が あ
は,透 過 率 と同 様 の 傾 向 が 示 され た.す な わ ちTAと り,ま た着 色 して い る た め,そ の ま ま で は飲 料 に適 して
ZNの 処 理 で は,2,3%の 添 加 量 で 吸着 率 は95∼97%に い る と は言 い難 い.そ こで6種 類(SD,BA,TW,ZN,TA

達 し,ほ とん ど吸 着 さ れ た. とKA)の 粉 末 活 性 炭 を 用 い,フ ラ ク トオ リ ゴ糖 の損 失

4.粉 末 活 性 炭 の総 合 評 価 が 少 な く,か つ ジュ ー ス の清 澄 化,脱 色 と脱 臭 が可 能 な
ZNとTAの 処 理 の場 合 に は,清 澄 化,脱 色 と脱 臭 が 添 加 量(1∼5%)を 検 討 した.そ の結 果,か さ容 積 が3以
可 能 で あ っ た2,3%の 添 加 で,全 フ ラ ク トオ リゴ糖 は, 上 のZNとTAを 用 い た粉 末 活 性 炭 処 理 で,少 な くと も
89∼94%残 存 した.一 方,4,5%の 添 加 が必 要 で あ った 2,3%の 添 加 で ほ ぼ,無 色 透 明 で 無 臭 の ジュ ー ス が 得 ら

BAとTWの 処理 で は,85∼94%残 存 した.こ れ らの 結 れ た.ま た これ らの 添 加 量 で は,ジ ュ ー ス中 の フ ラ ク ト

果 か ら,フ ラ ク トオ リ ゴ糖 の減 少 は概 して低 く,粉 末 活 オ リ ゴ糖 は 平 均 して89∼94%残 存 し た.一 方,BAと

性 炭 処 理 法 は有 効 な方 法 で あ った.他 方,市 販粉 末 活性 TWと 比 べ,ZNとTAは1/2の 使 用 量 で効 果 が あ る た

炭 のSDは1000円/kg,BA,TW及 びZNは800円/kg め,粉 末 活 性 炭 コ ス トも1/2に 軽 減 で き る.こ の よ うな

で あ るが,い ず れ の粉 末 活 性 炭 も大 量 に使 用 さ れ る場 合 こ とか らZNとTAは 使 用 に適 した良 好 な粉 末 活 性 炭 と

に は,製 品 コ ス トに影 響 す る.従 って,BAとTWと 比 考 え られ た.

べ,1/2の 使 用 量 で効 果 が あ るZNは,粉 末活性 炭 コス
トも1/2に な る た め,メ リ ッ トは大 き い もの と考 え られ 終 わ りに,本 研 究 を 行 う に あ た り,試 料 を提 供 して い
る. た だ い た 置 戸 町 役 場 と置 戸 町 農 協 に深 く感 謝 致 します.
154 日本 食 品 科 学 工 学 会 誌 第47巻 第2号2000年2月 (94)

7) 永 原 太 郎・ 岩 尾 裕 之・ 久 保 彰 治:全 訂 食品分析法
文 献
(柴 田 書 店,東 京),p.78,p.99,p.108,p.148
1) 日 高 秀 昌・ 栄 田 利 章・ 足 立堯・ 斉 藤 安 弘:農 (1977)

化,61,915(1987). 8) 米 山 智 恵 子・ 櫛 田 忠 衛:日 食 工 誌,26,38

2) 浅 見 輝 男・ 大 山 卓 爾・ 南 沢 究・ 月 橋 輝 男:農 業 (1979).

と 園 芸,64,1033(1989). 9) 下 田 満 哉・ 平 野 好 司・筬 島 豊:分 析 化 学,36,

3) 浅 見 輝 男・ 大 山 卓 爾・ 南沢 究:化 学 と 生 物, 792(1987).

27,813(1989). 10) 坂 本 宏 司・ 下 田 満 哉・筬 島 豊:農 化,67,685

4) 浅 見 輝 男・ 南 沢 究・ 月 橋 輝 男:農 業 と 園 芸, (1993)

66,413(1991). 11) OHYAMA,T., ITO, O., YASUYOSHI,S., IKARASHI,T.,

5) 本 堂 正 明・ 宇 野 豊 子・ 奥 村 幸 広:北 海道食加研 報 KUBOTA,M., NAMISAWA,K., TSUKIHASI,T. and
告,1,9(1994). ASAMI,T.: Soil Sci. Plant Nutr., 36, 167 (1990).
6) 本 堂 正 明・ 佐 藤 英 夫・ 宇 野 豊 子・ 奥 村 幸 広:北 海 (平 成11年8月4日 受 付,平 成11年10月21日 受 理)
道 食 加 研 報 告,1,15(1994).